映画で観る戦争と平和 沖縄 戦中編


中村恵里香(ライター)

第二次世界大戦において日本で唯一地上戦の舞台となったのは沖縄です。今回はその沖縄戦を描いた映画から戦争と平和を考えてみたいと思います。

沖縄戦とは、1945年沖縄諸島に上陸したアメリカ軍とイギリス軍を主体とする連合国軍と日本軍との間で行われた地上戦のことで、多くの民間人がこの戦いに巻き込まれて命を落としました。

その沖縄戦を描いた映画は20本に及びます。

DVD化されていない作品もありますが、ほとんどの作品はネット配信やDVDで観ることができます。

沖縄戦争映画(クリックでPDFが開きます)

 

最も有名なのが『ひめゆりの塔』です。1945年3月23日、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒200名超が、軍の命令によって「ひめゆり部隊」と呼ばれる特志看護婦となり、陸軍病院に配属された物語の映画化ですが、ひめゆり部隊についての映画はドキュメンタリーを含めて5本もあります。今井正が2回、舛田利雄、神山征二郎と有名な監督が映画化しています。

特に皆さんに観ていただきたいのは、ドキュメンタリー『ひめゆり』です。ただし、この作品DVDにはなっていませんので毎年6月に行われる劇場上映でのみご覧になれます。現在予告編を観られるのは、舛田利雄監督の『あゝひめゆりの塔』のみです。

 

『激動の昭和史 沖縄決戦』は、太平洋戦争末期、日本の本土決戦が目前に迫る中、沖縄を舞台に繰り広げられた未曽有の激戦と悲劇の実態を岡本喜八監督が描いたものです。

 

『対馬丸—さようなら沖縄—』はドキュメンタリーアニメーションと謳っています。1944年8月21日、沖縄の本土疎開学童800余人を乗せた対馬丸が、曇天、時々スコール、さらに台風が接近する中、出航し、翌22日、船は米軍潜水艦に発見され、魚雷攻撃の末、沈没してしまいます。学童の生存者はわずか59人という悲劇が起こりますが、その事実は、軍部により闇から闇へと葬られた物語を描いています。

https://youtu.be/VNmaV7tiDvM?si=BF3OXeBnMbFkaYr2

 

同じくアニメーション作品の『白旗の少女 琉子』は、太平洋戦争末期の沖縄で力強く生きる少女を描いた作品です。

 

残念ながら予告編がないのですが、『GAMA月桃の花』は終戦50周年の1996年に公開された文部科学省選定の映画です。祖母を訪ねて来日したアメリカ人ハーフの青年に、祖母の体験した沖縄戦の悲劇の真相が語られる物語です。

 

『沖縄 うりずんの雨』はアメリカ人監督ジャン・ユンカーマンによる沖縄戦を日米両面から見られるドキュメンタリーです。

 

『STAR SAND 星砂物語』は、アメリカ人監督ロジャー・パルバースによるもので、大学に何となく通い、周りにもなじめないで毎日無気力に生きていたヒロインが、戦時中の若者たちが何を考え、何を夢見て生きていたかを知り、平和のありがたさや命の尊さについて改めて気がつく物語です。

 

『ハクソー・リッジ』は、メル・ギブソン監督による沖縄戦を描いた物語です。人を殺そうとしないので軍法会議にかけられたデズモンドは、結局武器を持たずに戦場へ行くことを許され、敵味方の分け隔てなく治療して多くの命を救った実在の人物です。沖縄の人々の目線が全くないので、日本ではあまり良い評価を得られませんでした。

 

『海辺の生と死』は、島尾敏雄の私小説『死の棘』に、敏雄の妻である島尾ミホの小説『海辺の生と死』や敏雄による短編小説『島の果て』などの内容を織り交ぜ、昭和19年(1944年)12月、奄美 カゲロウ島(加計呂麻島がモデル)を舞台に極限まで追い詰められた夫婦の姿を描いた作品です。

 

『沖縄スパイ戦史』は、第二次世界大戦末期に民間人を含め多くの死者を出した沖縄戦の知られざる戦いをめぐるドキュメンタリーです。

 

『ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶』は、沖縄戦を生き残った人たちの証言をまとめたドキュメンタリーです。当時、劣勢だった日本軍の本土決戦準備の時間稼ぎのために沖縄は捨て石にされ、女性や子ども、老人までもが徴用され、戦闘協力を強いられました。さらに軍が県民に集団自決を強制し、死に切れない子どもを親が手を下して殺すという悲惨な光景も広がり、沖縄県出身の戦没者は12万2282人、当時の沖縄の人口の3人に1人が亡くなっています。

 

『生きろ 島田叡―戦中戦後の沖縄県知事』は、太平洋戦争末期に沖縄県知事に着任した、島田叡氏の足跡をたどるドキュメンタリーです。

 

『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』は、戦争の地獄図絵を描いた丸木位里・丸木俊夫妻の大作「沖縄戦の図」の全貌に迫るドキュメンタリーです。

 

『島守の塔』は、第二次世界大戦只中の沖縄県において、最後の官選知事として本土から派遣された島田叡を中心として沖縄戦のあらましを描いた作品です。

 

『木の上の軍隊』は、終戦に気づかないまま2年間も木の上で生き抜いた2人の日本兵の実話に着想を得た井上ひさし原案の同名舞台劇を映画化したものです。

 

『満天の星』は、1944年8月22日に沖縄から九州へ向かっていた学童疎開船・対馬丸が、米軍の潜水艦に撃沈された後、箝口令が敷かれたことで詳細が謎に包まれていたこの事件について、数々の証言などから検証するドキュメンタリーです。

 

沖縄戦の厳しさを描いた作品群ですが、底には死ねという日本軍と生きろという沖縄の人々との葛藤があります。厳しい闘いの中、生きようとする人々の姿は本当に心が震えます。ぜひ沖縄を舞台にした闘いを描いた作品群の中からこれだと思った作品を観てください。きっと映画から訴えるものが感じられると思います。

 


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