中村恵里香(ライター)
広島の原爆投下を描いた映画は17本ありましたが、長崎は今年公開された『長崎-閃光の影で-』を含めてたったの9本です。
なぜこんなに少ないのか、私にはすごく不思議です。この9本は、オンライン配信やDVDで観ることができますので、興味のある方は、検索してご覧ください。
長崎原爆作品(クリックでPDFが開きます)
さて、長崎の原爆というと、いの一番に思い出すのが、永井隆氏の残した文章から映画化された『長崎の鐘』と『この子を残して』です。『長崎の鐘』は残念ながら予告編がありませんので、『この子を残して』を観てください。こちらからレンタル/購入して全編ご覧いただくことも可能です。
黒澤明監督の『八月の狂詩曲』は、当時リチャード・ギアが出演するので話題になりました。
虫プロダクションが原爆投下60年を迎えた2005年に制作した『NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘』は、実在の元長崎聖フランシスコ病院長の秋月辰一郎氏が体験した被爆と医療活動をアニメ作品として作られた映画です。
『爆心 長崎の空』は日向寺太郎監督の作品で、AMOR内で「いまを生きることへの問いかけ」と題して公開した監督のインタビューも合わせてご覧ください。
『母と暮せば』は、広島を舞台にした井上ひさし氏の戯曲『父と暮せば』を、もし井上ひさし氏が生きていたら、長崎を舞台にこう描いたのではないかと山田洋次監督が制作した作品です。
今年2025年に公開された『長崎-閃光の影で-』は、カトリック信徒の監督・松本准平氏の作品です。
太平洋戦争下、看護学生の同級生で幼なじみの田中スミ(菊池日菜子)、大野アツ子(小野花梨)、岩永ミサヲ(川床明日香)は、空襲による休校のため長崎に帰郷します。久しぶりに地元へ帰って来た3人は、それぞれ家族や恋人との幸せな時間を過ごしますが、1945年8月9日、原子爆弾が長崎に落とされたことで、その日常は一変します。一瞬にして廃墟となってしまった長崎の町で、彼女たちは未熟ながらも看護学生としての使命をまっとうしようと奔走します。
この作品、日本赤十字社の看護師たちによる手記『閃光の影で―原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記―』が原作になっています。医療態勢もままならない状況下で命と向き合い続けた1か月に及ぶ救護活動の日々が克明に描かれています。一発の新型爆弾により日常の楽しい生活が奪われ、非情な現実の中3人の女性たちは、命の尊さとともに生きる意味を問いかけています。
ご存じの方も多いと思いますが、この映画は2025年10月31日に日本カトリック司教協議会の推薦作品としてバチカンのフィルモテーカで上映されました。
この作品は、戦後世代で、被爆3世である松本監督の平和への願いのこもった作品だと思います。

