Doing Charity by Doing Business(30)


山田真人

前回は、FABC(アジア司教協議会連盟)の参加レポートを含めて、アジアのカトリック教会とその若い力について、お話をしました。その中では、デジタル環境や国際社会にグローバルに広がる課題など、現代の社会だからこそ向き合うべき司牧的要素が多くありました(詳しいレポートはこちらから)。今回は、筆者が現在活動している団体の中で活躍する学生スタッフの姿を通して、日本のカトリック的精神で働く学生の姿をご紹介します。その上で、今後どのような希望が見えてくるかについて、考えていきます。

NPO法人せいぼでは、学生が運営の中核を担い、マラウイの子どもたちへの給食支援をはじめ、社会課題の学びを実践しています。学生たちは、マラウイ現地スタッフとのオンラインでのやり取りや月次レポートの作成、広報業務、ウェブサイト管理、学校での授業の計画・実施など幅広い活動に携わり、約50名の大学生・高校生がそれぞれの強みを活かして活動しています。

平野健太郎さん(静岡サレジオ中学校・高等学校卒、上智大学4年)は、中高で培った主体性や協働性を活かし、学生チームの設立や広報、レポート作成、ウェブ運用をリードしてきました。平野さんは、学生時代の経験が大学での活動や将来のキャリア形成につながることを実感しており、「NPOを通じて学んだ主体性や協働性は、社会に出たときに自分の力を発揮するための土台になる」と語ります。

一方、澤田さん(青山学院横浜英和中学高等学校卒、立教大学2年)は、自身の英語力やデザイン、発信のスキルを活かし、マラウイ産コーヒーブランド「Warm Hearts Coffee Club」の広報や海外インターンとのコミュニケーションに携わっています。澤田さんは「自分の強みを社会貢献に結びつけることで、学びが現実の行動に直結する」と感じ、学生自身の得意分野を活かす新しい形の奉仕を実践しています。

また、津田塾大学の大武さん(光塩女子学院中等科・高等科卒)は、女子校でのチームワークを活かし、同中学高校の在学中に親睦会でのコーヒー販売企画のリーダーを務めました。初年度の活動で中1から高2までのメンバーと協力して企画を成功させ、以後毎年引き継ぎながら活動を継続しています。大武さんは「一つの企画をチームで作り上げる経験は、自分の成長と次の世代への学びの継承につながる」と話します。

このように、学生たちはそれぞれの得意分野や経験を活かしながら、マラウイへの支援と自らの成長を同時に実現しています。NPO法人せいぼは、彼らにとって学びと実践を同時に体験できる場であり、社会と学校、世界のつながりを実感できる舞台となっています。

せいぼの活動は、企業、NPO、学生を結びつけ、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマに展開されています。この繋がりにおいて重要なのが、カトリック教育の実践的な応用です。それはNPOとの緩やかな繋がりや、カトリック教育の原則の実践的な応用として現れています。学生をこの枠組みに巻き込むことで、せいぼはSDGsの活性化に貢献するだけでなく、学生が現実世界でカトリックの価値観に触れ、学ぶためのプラットフォームを提供することになります。

さらには、カトリック的なミッションが学校、NPO間、青年の中に生きるからこそ、教会共同体もその姿に関心を持って下さり、教会も活動の場になっていきます。次回は、旅する教会の概念の応用として、教会でどのようにNPOと関わり、青年たちが豊かに成長できるかを、考えていきます。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁いのち・信徒・家庭省のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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