ディック・ブルーナが描く天使


武藤優里菜

天使と聞いて、私がまず最初に思い浮かべるのは、ディック・ブルーナが描く「天使」です。それは、とてもシンプルな線で描かれた、かわいらしい天使です。今日は、天使が登場するブルーナの絵本作品を紹介したいと思います。

ディック・ブルーナはオランダの絵本作家であり、グラフィックデザイナーでもあります。彼はミッフィーの生みの親として知られていますが、実はミッフィーが登場しない絵本の方が多いのです。ブルーナは生涯に124冊の絵本を制作しましたが、そのうちミッフィーが主人公の「うさこちゃんシリーズ」は34冊に過ぎません。それ以外の作品では、子犬やライオン、ゾウ、人間の女の子など、さまざまな登場人物がいます。

そんなブルーナの作品の中で、天使が登場する絵本は2冊あります。一つは『クリスマスってなあに』、もう一つは『ちいさなうさこちゃん』です。どちらの作品にも、ブルーナならではのシンプルで親しみやすい天使が描かれています。

 

『クリスマスってなあに』

この作品は、イエス・キリストの誕生物語を聖書の内容に基づいて描いた絵本です。主人公を中心に物語が展開する絵本とは異なり、クリスマスがどのような日であるかを淡々とした語り口で伝えています。作中では、羊飼いたちにイエスの誕生を知らせる場面で天使が登場します。

最初に現れる天使は、表紙にも描かれている天使と同じ姿で、ほほ笑みを浮かべ、両手を合わせています。次のページでは、7人の天使たちがみな丸く口をあけて声を合わせて歌う様子が描かれています。私はこの天使たちから、どこかあたたかさを感じます。見ていると、なんだかほっとするのです。なぜそう感じるのか、自分でもうまく説明できませんが、ただ、ブルーナが描く天使たちが大好きなのです。その理由は単純で、「かわいい」から。それだけで十分なのだと思います。

クリスマスシーズンになると、本屋の絵本コーナーにはクリスマスにちなんだ絵本が特設コーナーに並ぶことがあります。もしかしたら、『クリスマスってなあに』もその中に並んでいるかもしれません。興味を持った方は、ぜひ探してみてください。

 

『ちいさなうさこちゃん』

もう一つ、天使が登場する作品があります。それは『ちいさなうさこちゃん』という絵本です。この作品は、うさこちゃんシリーズの第1作であり、ミッフィー誕生の物語を描いたものです。みなさんは、ミッフィーがどのように生まれたのかご存じでしょうか? 実は、ミッフィーの誕生は、ルカ福音書に描かれるキリスト降誕の物語と同じように、天使のお告げによって始まるのです。

天使は、ミッフィーのお母さんのもとに現れ、「じきに赤ちゃんができますよ」と優しく伝えます。この場面で登場する天使は、先ほど紹介した『クリスマスってなあに』に描かれている天使とよく似ていますが、よく見ると顔の形や表情、体と羽のバランスなどが微妙に異なります。ブルーナが一つ一つ丁寧に手書きで描いているため、同じように見える天使にも個性があるのです。

さらに注目してほしいのは、ブルーナが描く線です。一見シンプルに見えるその線は、まっすぐではなく、少し震えているように見えます。この手描きの線が、天使に優しさと温かみを与え、見る人の心をほっとさせてくれるのではないでしょうか。ブルーナの絵本を読むたびに、私はその線の魅力に改めて気づかされます。

 

今回はブルーナの絵本に登場する天使たちについて紹介しましたが、彼が描く天使は、見る人にあたたかさや安心感を届けてくれます。私にとっても、彼の描く天使は特別な存在です。シンプルさの中に、「天使」がもつ“やさしさ”や“希望”といった普遍的なイメージを、彼独自のスタイルで表現している点が、ブルーナの魅力だと思います。

ブルーナの絵本は、子どもだけでなく、大人にとっても大切な何かを思い出させてくれる存在です。そんなブルーナの作品に触れることで、私たちも日常の中で優しさや温もりを見つけられるかもしれません。今回は画像を載せることができませんでしたが、気になる方はぜひ、ブルーナの天使たちに会いに行ってみてください。きっと、あなたの心にも温かさを届けてくれるはずです。

 


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