Doing Charity by Doing Business(17)


山田真人

前回は、贈与体験や他者と関わることによって自分のタレントを理解することができるものとしてボランティアがあり、それを通じて自らの「ミッション」がわかってくるのではないか、と述べました。今回は、このボランティアについて、さらに実践的に深めることで、現代においてどのようにその体験から自分の召命を感じることができるところまで繋がるのかを、考えていければと思います。

ドルトン東京学園では、複数の団体から話を聞き、授業で何を自分が取り上げるか考え、活動をする授業ある

まず、ボランティアという言葉を聞いて、日本ではおそらくNPOに代表される非営利組織を思い浮かべると思います。しかし、NPO(Non Profit Organization)は、実際には決してNo Profitではなく、利益を多く出していくことが社会の中では必要です。一般的な会社は利益を株主に配当したり、次の収益事業の発展のために使用していきます。もちろん、NPOも収益事業のために投資をすることはありますが、あくまで優先すべきはそのミッションです。ここでいうミッションは、団体の持つ社会的な使命を表しています。例えば、私が代表を務めるNPO法人聖母は、世界中の飢餓を学校給食を通して減らしていくことで、質の高い教育に繋げ、それに関わる日本の子供たちの教育、生き方の変化にも繋げていくことをミッションとしています。従って、NPO法人聖母は、利益の創出を第一目的にしているのではなく、事業はミッションを達成していくための手段なのです。このように考えると、NPOはNon Profit-Driven Organizationと言うことができます。

以上のように考えると、NPOに関わることは決して自分を犠牲にすることではなく、ミッションの実現のためであればその事業の発展を楽しんでもいいし、世の中で働く自分自身を成長させたり、団体を大きくするために投資をしたりするのもいいことなのです。ボランティアも同じく、このようなミッションに共感して働いてくれるのであれば、それを自分が続けるために必要な経費や投資は受けても問題はないでしょう。このようにして、自分が世の中と関わることを具体的な体験として、仕事や学校教育以外で得ることができるのが、ボランティアなのです。

したがって、ボランティアは、社会に積極的に関わりたいと考えている人々、その場所を必要としている人にとって開かれているということになります。『ボランティア もうひとつの情報社会』(岩波書店、1992年)の中で、著者金子郁容さんは、ボランティアは「開かれた価値」を持っていると述べています。その営みの中で、自分と違った価値観を持っている人と触れたり、異なる文化を見聞きしたりすることで、自分が変わっているのを体験できるかもしれません。従って、ボランティアの報酬は、もともと与えられているのではなく、自分で決めていくもの、営みの中で現われていくものということになります。

また、同書では、ボランティアは、vulnerable(かよわく)になることだとも述べられています。自分の周りにある問題を自分のものとして捉え、自分がそれが解決できない弱い存在だと感じることで、過度に自分に自信を持ったり、他者を受け入れられなかったりという姿勢から抜け出すことができます。

以下のTED Talkで、このvulnebilityについて語っている動画をこちらから、日本語でも見ることができます。

現代は資本を生み出すことを中心とするのではなく、将来の世代がよりよく生きていくために、利益を社会のために使用するようにシフトしています。その中では今までのようにボランティアと自分の仕事を分けて考える時代が終わってきているようにも思います。

ボランティアで得たものを自分の生きていく社会を変えるために仕事で使っていったり、学生が次の進路のためにその体験を用いたりする必要があります。そのためにはミッションの実現のために人件費などの経費もかけることはあります。このように考えると、今までのように空いた時間でできる社会的な活動といった定義の「ボランティア」を使うことはなるべく避け、NPOなどの非営利組織はその人の長期的な社会にコミットしたいと考えている「ボランティア精神」を見つけ、それを育てていく必要があります。

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最後に、このボランティア精神というものを、どのように教会が捉えたらいいかを少し考えられればと思います。ハンス・キュンクは『教会論(下)』の中で「教会の全生命は霊的賜物と奉仕との生きた合奏である」と述べています。教会はボランティア組織ではありません。しかし、社会に奉仕する人の刺激を得ることはできると思います。

さらに、社会に奉仕したいというミッションを感じている人は、教会でその霊的賜物で動いている人々から刺激を得ることもできます。このような合奏によって、教会が社会に開かれてもいいのではないかと考えています。実際に日本のキリスト教に影響を受け、内村鑑三の『代表的日本人』に描かれている人物は、当時の日本を変えたいという社会的ミッションと、霊的賜物の力を得ているとも言えます。

次回は、さらにこのボランティア精神と教会についての繫がりを見ていければと思います。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁いのち・信徒・家庭省のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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