日本の夏を華やかに彩る花火大会は、大小さまざまなものが行われています。その中でも一生に一度は観に行きたいといわれる日本三大花火大会をご存じでしょうか。さまざまな説がありますが、現在は一般的に秋田県大仙市の「全国花火競技大会(大曲の花火)」、茨城県土浦市の「土浦全国花火競技大会」、新潟県長岡市の「長岡まつり大花火大会」です。この3つの花火大会の名称を見てお気づきの方もいらっしゃると思いますが、唯一競技花火大会でないのが長岡まつり大花火大会です。
その歴史は古く、明治12年(1879年)に遡ります。戊辰戦争で焦土と化した長岡で先手町八幡様のお祭りで、遊郭関係者が資金を出し合い、350発の花火を打ち上げたことに始まります。そして昭和20年(1945年)8月1日に起こった長岡空襲では、町の8割が焦土
と化し、1488名が犠牲となりました。空襲から1年後の8月1日には、「長岡復興まつり」が開催されます。そして、20年前に起きた中越地震と数々の苦難が重なった長岡ですが、犠牲になった人々への慰霊の意味がこめられた花火大会だということが描き出されています。
長岡大花火は、さまざまな人たちの力によって成り立っています。花火師はもちろん、資金集めなどのボランティアや大会設営に携わる人、大会運営者たちがいます。その人たちにもスポットが当てられています。その一人ひとりに長岡大花火に対する思いがあります。ここでは詳細は省きますが、その人々の思いには、心打つものがあります。そして、長い歴史の中で培われてきた花火への思いが満ちあふれています。
クライマックスは、もちろん花火です。20台のカメラを駆使して撮影された花火は、さまざまな角度から映し出され、その姿は圧巻です。
この作品で訴えているのは、映画の冒頭に流される山下清氏の「みんなが爆弾なんかつくらないで、花火ばかりつくっていたら、戦争なんか起こらなかった」という言葉につきると思います。さまざまな人たちが関わる花火大会で、鎮魂と平和を願う祈りにも似た花火大会の世界を映画館まで足を運び、大きなスクリーンでお楽しみください。
中村恵里香(ライター)
6月28日(金)新宿ピカデリーほか全国順次公開
公式HP:https://nagaoka-hanabi-movie.jp
監督:坂上明和/ナレーション:佐藤栞里/撮影:小山一彦/編集:斎藤 隆/音楽:高橋慶吉/題字:金澤翔子/協力:VIC、アイエムエフ、if/製作:夢プロジェクト/配給:NAKACHIKA PICTURES