2023年11月日本を代表する脚本家・山田太一氏が亡くなりました。その代表作の長編小説『異人たちとの夏』は、1988年大林宣彦監督が日本で映画化されています。その『異人たちの夏』を原作とした「異人たち」が現代イギリスを舞台にして公開されますので、紹介させていただきます。
12歳の時に交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム(アンドリュー・スコット)は、ロンドンのタワーマンションに住んでいます。彼は、両親の思い出をもとにした脚本の執筆に取り組んでいるのです。
アダムの住むタワーマンションの一室に、どこか謎めいた青年ハリー(ポール・メスカル)が訪ねてきます。そのマンションは、アダムとハリーしか住んでいないといい、最初は警戒するアダムですが、徐々に二人は親しくなっていきます。
ある日、幼少期を過ごした郊外の家を訪れると、そこには30年前に他界したはずの父(ジェイミー・ベル)と母(クレア・フォイ)が当時のままの姿で暮らしていました。両親との時間を埋めるようにアダムは、足しげく実家に通い、両親のもとで安らぎの時を過ごします。そして、アダムの心は、徐々に解きほぐされていくのです。
そうした中で、アダムはハリーと恋に落ちていきます。さて、ここからは皆さん観てのお楽しみです。両親との間は、そしてハリーとの関係は? アダムと取り巻く世界が描かれていく中で、亡き人との関係を築きつつ、男性同士の恋と日本版にはない世界が描かれています。
日本ではまだ同性愛についての理解が深まっていない状況ですが、それはイギリスでも変わらないことが描かれています。人を愛し、心を通わせるとはどういうことなのか私たちに問いかけている作品でもあります。改めて、大林宣彦監督の作品との違いを深く考えてみたいと思う作品でした。
中村恵里香(ライター)
2024年4月19日(金)全国公開
公式ホームページ:https://www.searchlightpictures.jp/movies/allofusstrangers
スタッフ
監督:アンドリュー・ヘイ/製作:グレアム・ブロードベント、ピート・チャーニン、サラ・ハーベイ/製作総指揮:ダーモット・マキヨン、ベン・ナイト、オリー・マッデン、ダニエル・バトセック
キャスト
アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、ジェイミー・ベル、クレア・フォイ
2023年製作/上映時間:105分/イギリス・アメリカ合作/原題:All of Us Strangers/原作:「異人たちとの夏」山田太一著(新潮社刊)/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.