Doing Charity by Doing Business(8)


山田真人

前回は、NPO法人聖母が企画している具体的な教会活動と、それに関わるミッションスクールの生徒の声をお届けしました。その中で、世代間、国際交流を促す教会が果たせる「第三の場所」としての機能や、生徒たちがNPOとの外部連帯を通して得た学校での社会に開かれた学びを体現する場所として、教会の司牧現場としての機能を紹介しました。今回からは、別の具体例として、東京都杉並区の光塩女子学院と高円寺教会の取り組みについて、3回に分けてご紹介したいと思います。

 

特別活動「NPOの活動を体験してみよう!」

光塩女子学院では、特別活動という生徒が任意で好きな講座をとることができる時間があります。その一つに、校長先生が入れて下さったのが「NPOの活動を体験してみよう!」という講座でした。講座を取ってくれた生徒たちは中学校1年生から高校2年生までいましたが、国際支援になんとなく関心があるといっただけの人が多い印象でした。今までボランティア活動をしたことがあっても、既にある活動に入って一日働いただけといった状態が一般的です。

 

Charity Begins at Home

上記のような生徒がまず、活動をする動機を持つためには、なぜ自分がその活動をするのかが腑に落ちる必要があります。そのために必要なのは、以下の三つの点です。

①自分の役割を見つけること(Talent)
②他の人と一緒にできて楽しいと思えること(Teamwork)
③誰かの役に立てている、もしくは立てると実感すること(Charity)

光塩女子学院、カリタス女子高校、高円寺教会の協働の様子

上記の3つを包括するアイデアが、Charity Begins at Homeです。この言葉は、自分が出会った出来事、人、すなわち「自分の周り」(home)で影響を受けた結果熱意を感じたことから、自分のできるチャリティを始めるということです。もちろん、このhomeを「母国」と取り、「まず自分の国のために活動するところから始めなさい」という戒めに取る人もいます。

一方で私は、現在のグローバル化を考えれば、自分の出会った国、人々のためにできることを探すことでもいいと思っています。そうすることで、私たちは主体的に行動ができるようになります。

そのため私はいつも初回授業で、自分のマラウイとの出会い、そしてそれを取り囲んでいるビジネスについて、さらにそれを通して持ち始めた自分のパッションについて、ストーリーを組み立てながら話します。なぜなら講座で一番重要なことは、自分が出会ったhomeに対してパッションを持って主体的に行動できる大人(role model)を知ってもらうこと、そして生徒の皆さんにもその可能性があることを感じてもらうことだからです。

 

支援国を知り自分の国を相対化する

アメリカのインターンによる商品開発の授業

皆さんは、海外に行って日本の良さを体感した思い出はありませんか。日本に住んでいると、他国と比べるというということはできたとしても、その比べ方が狭くなることが多いです。そのためこの講座の中では、まずマラウイというアフリカの最貧国についてマイナスのイメージではなく、プラス面を発信していきます。人口が多く若い国で、英語が話せてコミュニティを大事にする温かい心を持っている国であることをお話しします。もちろん、貧しい国であること、社会課題にも触れます。しかし、先にマラウイの良いところを示すことで、日本の豊かさとは違う価値観に触れ、日本人として学べる点もあると気づいてもらうことが目的です。

こうした狙いから、私は積極的に色んな国の人々を授業に連れてくるようにしています。そこから、自分が世界の中の日本人であることを知った上で、アフリカを支援することの意味を考えていきます。

 

商品で親近感を持つ

支援する国について知った上で、その感覚に形を与えてくれるのが、商品です。私たちの場合は、マラウイ産コーヒーを使用しています。この時に、もう一度なぜ私たちがこの活動をしているのかを、振り返ります。その時に、「自分はこんなことができるはず」(Talent)と、意見を聞くと積極性が産まれたり、同じような意見が出た場合はそれを一つのグループ化して、学年を越えた協働(teamwork)ができる機会が生まれたりします。そうすると、もう一番大事なステップは越えてきています。なぜなら、その時点で「誰かの役に立てる」(Charity)という展望でわくわく感が出てくるからです。

こうして自分のできることに気づき、他人との協力を覚え、誰かの役に立てるかもしれない、自分が世界に少しでも影響を与えるような働きができるかもしれないという気持ちが芽生えてきます。こうした気持ちは、私たち大人、特に信仰を持ち、神から与えられた召命を仕事の中で生かそうとしている人々にとっては、共通して重要なことだと思います。こうした思いを持った若い生徒が、教会で自らの働きを示してくれる機会が増えれば、カトリック学校も教会の姿も未来に向けて変わっていくかもしれません。

次回も続けて、光塩女子学院の学習の過程と、教会司牧の繫がりについてお話をしていきます。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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