ただいま、つなかん


東日本大震災からまもなく丸12年になります。被害状況を描いた映画はたくさんありますが、その後の復興の詳細を知らせるドキュメンタリー映画は少ないように思います。今回、被災地の宮城県三陸の唐桑から元気をもらえるドキュメンタリー映画がまもなく始まります。

宮城県気仙沼市唐桑半島 鮪立(しびたち)には、美しい入江を見下ろす高台に建つ民宿「唐桑御殿 つなかん」はあります。

⺠宿「唐桑御殿つなかん」の目の前に広がる宮城県気仙沼市唐桑町鮪立の鮪立湾(震災前)

映画の舞台となる⺠宿「唐桑御殿つなかん」

100年続く牡蠣の養殖業を営む菅野和享さんと一代さん夫妻は、東日本大震災当時、津波によって浸水した自宅を補修し、学生ボランティアの拠点として開放、半年間で延べ500人を受け入れてきました。若者たちに「つなかん」と呼ばれたその場所は夫妻の「皆がいつでも帰ってこられるように」との思いから、2013年の秋に民宿に生まれ変わります。

女将となった一代さんは、自慢の牡蠣やワカメを振る舞い、土地の魅力を自ら発信しています。そんな「つなかん」に引き寄せられるかのように、元ボランティアの若者たちが次々とこの地に移り住んできます。彼らは海を豊かにする森を育てたり、漁師のための早朝食堂を営んだり、移住者のサポート体制を整えたりと、地域に根ざしたまちづくりに取り組み始めます。一代さんと若者たちは、復興のその先を見つめています。

そんなある日、海難事故が発生。養殖業を廃業し、閉じこもりがちになった一代さんを思い、全国各地から元ボランティアの若者たちやその仲間たちが「つなかん」に集まってきます。涙なみだの時を経て、民宿を再開します。

いつしか若き移住者たちは新しい命を授かり、地域を担う立場となっていきます。そして、コロナ禍による民宿存続の危機の中で迎えた

唐桑の伝統芸能・「松圃⻁舞」の太鼓を演奏する若き移住者

移住者たちは結婚し、地元を担う立場に

2021311日、震災から10年という節目を機に、自分の殻にこもりがちだった一代さんが大きな一歩を踏み出そうとしていました。一代さんがどのように動いたのか、そして唐桑に移り住んだ若者たちの活動は、ぜひ映画館に足を運んで観てください。人が出会い、思い合うことによって、共に生きるとはどのようなことなのか、そして苦難を乗り越え、前に進もうとしている人たちの姿を私たちが見ることで、生きる勇気とともに明るい気持ちになってきます。

中村恵里香(ライター)

2/24(金)より宮城・フォーラム仙台、2/25(土)より東京・ポレポレ東中野にて劇場公開 ! ほか全国順次公開

公式ホームページ:https://tuna-kan.com/

スタッフ;監督:風間 研一/音楽:岡本 優子/ゼネラルプロデューサー:齋藤 隆平/プロデューサー:柴 木綿子/編集:井上 秀明

語り:渡辺 謙

2023年/115分/日本/ドキュメンタリー/配給宣伝協力:ウッキー・プロダクション/製作著作:文化工房

©️2023 bunkakobo


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

5 × 5 =