本連載は、イエズス会のグレゴリー・ボイル(Gregory Boyle)神父(1954年生まれ)が、1988年にロサンゼルスにて創設し、現在も活動中のストリートギャング出身の若者向け更生・リハビリ支援団体「ホームボーイ産業」(Homeboy Industries)(ホームページ:https://homeboyindustries.org/)での体験談を記した本の一部翻訳です。「背負う過去や傷に関係なく、人はありのままで愛されている」というメッセージがインスピレーションの源となれば幸いです。
ギャング出身*の親しい仲間たちにささげる(*訳注:「ギャング」とは、低所得者向け公営住宅地等を拠点に、市街地の路上等で活動する集団であるストリートギャングを指します。黒人や移民のラテン・アメリカ系が主な構成員です。)
グレゴリー・ボイルGregory Boyle(イエズス会神父)
訳者 anita
Q:なぜ本書を書こうと思ったのですか?なぜ世の中にこれらの経験や実話を分かち合うことが大事だったのでしょう?
A:20年以上もの間、拘置施設内でささげるカトリックのミサや米国各地の講演会で、これらの実話を語ってきました。これらの実話を紙面に残すべきだといつも人から言われ続けてきました。最終的には、これらの実話を語る理由と同じ理由で、書きとめることにしました。つまり、私が光栄にも、ギャングメンバーのたちの生きざまと経験の中に見いだした勇気、高貴さ、良識、聖なる姿、そして神のみ顔を、人々にも見てほしかったのです。彼らの人間性と彼らが背負わなければならない重荷に対し、私は畏敬の念を持つようになりました。そして、読者の皆さんにも、同じものを見てほしいと思いました。
Q:ギャング出身の子たちに自信と力を与える最も効果的な方法はなんでしょうか? 彼らにどうやって信用してもらいますか?
A:「力を与える」とは、彼らを本来の真実な自分に帰してあげることです。ギャングメンバー(だけでなく、誰でも)は、自分が、神が創造時に思い描いていたとおりの姿であると発見して驚きます。神が失望するヒマがないほど愛するのに夢中だと発見すると、人生が一変します。しかし、これ以外にもやることがあります。彼らの愛着心を修復すること、癒すこと、不屈の回復力をまとめて整理することのほか、最も大きな課題は、この世界での今の自分の存在を定義しなおすことです。ギャング出身の子たちが完全に自由になるためには、力を与えるこれらすべてを行う必要があります。これは、たやすいことではありません。
あなたが彼らを愛すれば、彼らはあなたを信用します。こちらの役割は、彼らを希望へと導くことではなく、彼らにあなたを希望へと導いてもらうことです。あなたが彼らを尊重すれば、彼らは自分が尊いと感じます。愛を込めた思いやりと注意を向けることで、彼らは、喜びである自分、そして本来の美しい自分へと戻ることができます。そしてあなた自身も、その過程で同じように本来の美しい自分に戻るのです。これを信用しない手はないでしょう。
TATTOOS ON THE HEART by Gregory Boyle
Copyright © 2010 by Gregory Boyle
Permission from McCormick Literary arranged through The English Agency (Japan) Ltd.
本翻訳は、著者の許可を得て公開するものですが、暫定版です。