エリザベス 女王陛下の微笑み


今日はイギリスの映画監督ロジャー・ミッシェルの映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」をご紹介します。

ジュリア・ロバーツ と ヒュー・グラントが主演したロマンティック・コメディ「ノッティングヒルの恋人」(1999年)など数々の作品を残したロジャー・ミッシェル監督は昨年9月に惜しまれながら65歳の若さで他界しました。 そしてこの作品はその遺作となります。

 

映画の冒頭、劇場で開演を待ちわびるざわめいた観客の声と、第一幕の出演者及び照明・音響・衣装各担当への準備を促す放送が流れます。関係者は準備に追われ時間が過ぎていきます。

いよいよ開演。 

主演として出演者に声をかけながら皆の前を堂々と現れたのは、エリザベス2世です。 

こんなところから、この映画が始まりました。

 

以降、この映画は彼女のオンステージ。 

この映画を製作することを意識して事前に撮影しておいたと思えるほど全編にちりばめられたエピソードと写真の数々。それにも増して印象的なのは若いころから現在に至るまでの彼女の笑顔でした。

人を和ませてくれる笑顔。優しい気持ちにさせてくれる笑顔です。

 

エリザベス2世は1926年に生まれですので今年で96歳となります。

1947年に結婚し3男1女の母となりますが、1952年父の国王ジョージ6世が崩御により、彼女は25歳の若さで英国の君主となりました。

日本では英国として表現されているこの国ですが、

彼女はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国とその海外領土の立憲君主となってしまいました。 

 

その昔、大英帝国と言われたこの国は「日の沈まぬ国」と言われるほどで、かつて世界の1/4を支配していました。

その後それぞれの国が独立した現在。1952年には英国連邦(United Kingdom)として同盟国は7ケ国にまで少なくなったとのことです。

そんな同盟国ですが、彼女が君主となって以降、53にまで広がりました。

この同盟国は宗教を超えて世界の1/3の人口に当ります。

そこまで同盟国が広がった理由は何なのでしょうか。

 

映画の中で、シンガポール初代首相リー・クアンユーは「現代社会における英連邦の強さと結束は形式的な合意に頼るものではなく、共通の先祖や政治思想に基づくものでもなく“すべての国が個々の自由を尊重し、そのために全力を尽くす”という共通認識からくるものである」と言っていました。

わたしには、やはり、同盟の象徴として彼女の存在が大きいと感じられました。

過去、日の沈まぬ国と言われた大英帝国が今、彼女の笑顔に支えられています。

「皆のお母さん。ウイットに富んだ話しぶりと笑顔が英国王室を支えている」と

改めて感じました。

映画では、彼女は色々なシチュエーションで笑っています。

国民の前で、同盟国の人たちの前で、子供たちの前で。

そんな彼女の笑顔は大変素敵でした。

 

ただひとつだけ、王位の象徴である王冠を手にして彼女が「これは本当に重い。1トンくらいある」といったのが印象的でした。

25歳で王冠を引き継いだ彼女は、第二次世界大戦の混乱や悲惨な時代を国民と共に生きてきました。 心苦しい決断もたくさんあったと思います。

晩年子供たちや孫たちも育ち、英国王室は色々な出来事に翻弄されます。

映画後半、彼女は夫フィリップと公園を歩きます。

わが子の記念樹は、もう50年を過ぎて大木となっていました。

木のそばの日時計は大木の日陰になり、うまく時刻を表していませんでした。

フィリップが「次の50年は、またいろいろ木が生えるね」

「その時は、わたしはもういないわ」という会話が続きます。

この日時計はきっと彼女の象徴なのでしょう。

時は過行く。 

 

正直、世界は彼女の時代から、すでに次の時代に移っていますが、今なぜ「エリザベス 女王陛下の微笑み」を映画化したのでしょうか。

去る2022年2月6日で在位70周年を迎える英国君主エリザベス2世という理由は当然あると思います。

わたしが感じたのはもう一つ。

昨今、20世紀の第二次世界大戦を思い起こすようなニュースが毎日のように流れています。世界が不安な状態になりつつある今。

私たちは“彼女の希望を感じさせられる母性を持った笑顔を忘れてはならない”のではないでしょうか。 時は移ろっていきますが、いつも自分を信じ笑顔で人と接する。

“すべての国が個々の自由を尊重し、そのために全力を尽くす”ということを忘れない。

今だからこその映画と思いました。

この映画は6月に劇場公開となります。お楽しみに。

あき(横浜教区)

 

6月17日(金)、TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国公開!

オフィシャルHP:elizabethmovie70.com

監督:ロジャー・ミッシェル/製作:ケヴィン・ローダー/音楽:ジョージ・フェントン

出演:エリザベス2世、フィリップ王配、チャールズ皇太子、ウィリアム王子、ヘンリー王子、キャサリン妃、ジョージ王子、メ―ガン妃、ダイアナ元妃、ザ・ビートルズ、エルトン・ジョン、ダニエル・クレイグ、マリリン・モンロー、ウィンストン・チャーチル ほか

 

フィルムデータ:2021年/イギリス/カラー/90分/英語/5.1ch/ビスタ/日本語字幕:佐藤恵子/字幕監修:多賀幹子/原題:Elizabeth/後援:ブリティッシュ・カウンシル/配給:STAR CHANNEL MOVIES/© Elizabeth Productions Limited 2021

 

 


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