連帯・学び・伝道・憩い――『信徒の友』の歩みと展望


林 牧人(『信徒の友』編集長)

月刊『信徒の友』は、日本基督教団出版局の働きとして、信仰生活を豊かにし、確信と指針をもたらす働きを担うために「連帯・学び・伝道・憩い」の編集方針を受け継ぎつつ発行されています。聖書に聴き、教会の信仰を確認する霊的養いを基本に据えつつ、地上の旅路においてこの世に幕屋をはりつつ生きる全国の教会・信徒をつなぎ、その労苦と直面する課題を分かち合い、それぞれが遣わされている地域社会において福音を生きる歩みへと導かれることを願っています。

『信徒の友』刊行に至るまでの歩みは、1963年、日本基督教団に、信徒雑誌刊行準備委員会が組織されるところからはじまります。当時、日本基督教団の定期刊行物としては、機関紙「基督教新報」(現在の「教団新報」)、「教会婦人」、「教会青年」、「働く人」(職域伝道)、「礼拝と音楽」、「聖書の世界」、「こころの友」(伝道新聞)等がありました。その関わりのなかで、信徒向けのキリスト教総合雑誌を月刊で刊行する準備が進められ、編集方針として、以下の点が確認されました。

(1)教団の信徒の連帯性を強める。

(2)教会において信徒の信仰生活に役立たせる。

(3)「日毎の糧」(聖書日課と黙想)のように、毎日の信徒の信仰生活を実用的に助ける。

(4)宣教基本方策の目指しているところを内容的に推進する。

(5)楽しんで読みうるもの。

編集委員会を組織するにあたって、委員長は信徒が担うこととし、編集長は教職が担うこととなりました。こうして、1964年3月12日、4月号が創刊号として40ページ立てで刊行されました。雑誌名は公募で『信徒の友』と決まりました。途中で日本基督教団の機構改定があり、出版部が独立した収益事業として出版局となって、『信徒の友』も教団直轄の刊行物から、キリスト教の総合雑誌としての性格をも持つようになりましたが、創刊以来57年にわたり、休みなく発行を続けることがゆるされています。

刊行の経緯からも分かるように、『信徒の友』は、不特定多数に向けた直接的な「福音宣教」(伝道)を目指すと言うよりも、全国に1700近く存在する日本基督教団の諸教会・伝道所の信徒の方々を繋ぎ、その交わりと連帯を強め、信仰者としての足腰を鍛え、教団全体の宣教力を増していくことに主眼が置かれています。諸教会・伝道所には、「信徒の友係」を担う信徒の方々がおられ、現在でも、その働きは継続されています。ある時期までは、財政的な裏付けもあって、しばしば、教団の各教区を編集長はじめ、関係者がこまめに訪問し、『信徒の友』の普及と活用のアピールに努めたことで、大きな成果があったこともあります。また「信徒の友セミナー」を開催するなど、信徒の方々を繋ぐ具体的な働きも継続されていました。「この雑誌に対する教団、教区の関係者の期待と協力はなみなみならぬものがあった」(『出版局の歩み』より)との記述もあります。

『信徒の友』2021年12月号

特筆すべきこととしては、1966年4月号から三浦綾子による連載小説「塩狩峠」が始まったことです。このあたりから、ページ数も発行部数も増え、『信徒の友』は教団にとどまらず広くキリスト教界全体に広がっていくことになります。時代も、キリスト教会がいちばん勢いづいていた頃のことでした。

1970年代を迎える頃、日本基督教団は、その後数十年にわたり続く「教団紛争」に突入していきます。世間的にも、教会的にも大きく揺れた時代、教団総会、教区総会を始めとする教会会議が暴力的に粉砕される事態のただ中で、教団の瓦解を防ぎ、信徒の方々を励まし続けたのは『信徒の友』であったと、多くの方々が証言しておられます。

創刊60年をうかがう今、コロナ禍にあってキリスト教会もまた、大きく揺さぶられています。コロナ禍以前より、教勢の低下は留まるところを知らず、それに比例するように『信徒の友』の購読者数は減少傾向にあります。文字を読めなくなる、という、高齢化もこれに拍車をかけています。財政的困難から、編集長の全国行脚や、セミナーの開催もできなくなっています。若い人にもっと購読してもらえないか、との声もありますが、そもそも教会にその対象が多くはいません。

このような困難な時代だからこそ、『信徒の友』は、「教会と教会、教会と信徒、信徒と信徒を繋ぐ」という、創刊以来の編集方針を堅持し続けたいと願っています。月刊誌としての速報性や柔軟性は維持しつつ、また、紙媒体以外の様々なメディアとの協働や活動に恐れずに取り組みながらも、安易にジャーナリスティックな傾向に流されず、また、諸教会・伝道所、信徒の方々の具体的な課題に寄り添い、現代社会に向けた、教団全体の、また、キリスト教界全体の宣教力を増していくために、その働きを担い続けていきます。

 


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