やまじ もとひろ
この連載では「変わりつつある英語教育」をテーマに、中学校や高等学校における英語教育のシステムが様変わりしてきた現状を追いかけてきました。
前回から国際バカロレア認定校について、話を進めています。
「国際バカロレア」は、英語では International Baccalaureate と書き、端的に言えば、 「国際的に通用する大学入学資格」を得ることができる学校です。いま、国内に私立、公立を問わず、国際バカロレア認定校が徐々に増えています。
東京都立国際高校は、都立高校で初の国際学科高校として、1989年に設立された学校ですが、2017年5月、国際バカロレアのディプロマ・プログラムの実施校として認定され、翌2018年4月からコースを設置して、本格実施に入りました。
国際バカロレアコースでは、世界の様々な文化に対する理解と尊重が教育のテーマとなっており、多くの科目を英語で学びます。
1年生では、体育や国語、日本史等は日本語で学びますが、数学、理科、社会など、そのほかは英語で学習します。
2・3年生では、国際的に認定されたディプロマ・プログラムの科目を学習、日本語(国語)を除くすべての科目を英語で学習します。
国際バカロレアコースを修了すると、日本の高校の卒業資格と国際バカロレア・ディプロマプログラム(フルディプロマ=卒業のための全資格)認定資格が取得できます。
ただしフルディプロマを取得するためには、世界共通の統一試験(3年生の11月実施)で24点以上(45点満点)の成績を取得する必要があります。
これまで、このコースの卒業生の多くが、フルディプロマ(卒業全資格)を取得し、世界でも上位の海外大学に合格するなど、成果を上げています。
そして、見逃せないのが、海外の大学だけではなく、国内の難関大学にも進学していることです。この春も北海道大、九州大などの国立大学、並んで早慶上智大などの私立難関大学に進学しています。
このコースは学年25人が定員です。少人数ゆえ隠れてはいますが、都内トップクラスの大学進学実績といえます。
このところ、日本の大学が、国際バカロレアを活用した入試を実施するケースが増えてきました。国立大学では、東大、京都大、筑波大、東京外国語大、大阪大など、公立大学では国際教養大、横浜市立大などが導入しています。私立大学でも早稲田大、慶応義塾大、上智大学、立教大、法政大などが実施しています。
大学側の狙いは世界から優秀な人材を集めたいということにありますが、もちろん、日本の高校生であっても、国際バカロレアのフルディプロマを取得していれば、これらの入試を受けることができます。
この春、開智日本橋学園高校(東京)が初めての卒業生を送り出しましたが、東大進学者(1名)をはじめとした難関大学に多くの進学者を出して周囲を驚かせました。
2015年、中高一貫校として始動した開智日本橋学園中高は、都内23区にある私立校では初の国際バカロレア認定校でした。このとき中学に入学した1期生が、この春卒業したわけです。
中高一貫校ですから、国際バカロレアのDP(ディプロマ・プログラム=卒業認定学習、16~19歳、日本の高校2~3年生にあたる)と、ほぼ中学校に対応しているMYP(ミドルイヤープログラム、11~16歳)という教程で認定されています(教程については前回参照)。
また、国際バカロレアの授業は、これまでは都立国際高のように各科目とも英語で行なわれるのが一般的でしたが、開智日本橋学園中高は、日本語で履修できる教科が大幅に増えた「日本語DP認定校」です。
開智日本橋学園中高では、1年生から4年生(高1)まで、国際バカロレアのプログラムで学ぶクラスのほかに、国内普通科と同じ課程で学ぶクラスも設けられ、5年生(高2)からは、混合クラスとなって大学進学に目を向けていきます。
いずれにしても、国際バカロレアで学ぶ生徒に引きずられるように、学校全体が英語に強い特徴を持つようになっていました。
その結果、東大進学ほか、難関大学に多くの進学者を送り出すことにつながりました。
国内大学が国際バカロレア資格を認めるようになってきたこと、日本語で履修できる「日本語DP認定校」が認められたことなど、国際バカロレアを学ぶ環境が、国内でも身近になってきました。こうしたこともあって国内の国際バカロレア認定校数は徐々に拡大しています。
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15回にわたって、日本の中学校、高校での「英語教育のいま」を、駆け足でお伝えしてきました。このほかにも高校での「英語多読教育」など、新たな動きも出てきていますが、これらはその定着を見極め、次の機会のご紹介に譲りたいと思います。
[了]
やまじ もとひろ
教育関連書籍、進学情報誌などを発刊する出版社代表。
中学受験、高校受験の情報にくわしい。