神様の視点で働く


柳沼千賀子(カトリック二本松教会)

私が仲間と運営している「福島やさい畑」は皆様の応援のお陰で元気です。現在は宅配便でのご注文を中心に農産物の販売をさせて頂き、また、フードバンク活動もフル回転しております。

コロナ禍は当法人にも大きな打撃で、首都圏での野菜販売は3月以降完全にストップして今に至っております。当初、廃業の2文字が頭をよぎり、対策も思い浮かばずしばし呆然としておりました。そんな中、ある方がカトリック新聞に窮状を掲載していただくよう取り計らってくださったのです。新聞を通して皆様にご支援をお願いするとすぐにたくさんの方が応えてくださいました。それをきっかけに、フードバンク活動の方もむしろ需要が多く、在庫の食料も底をつき始めてきましたので、食品の提供をお願いする記事を地元の地方新聞に掲載して頂きました。

すると、その記事を読んだということで近隣の方が食料品を届けて下さったり、ちょっと遠いところからは宅配便で送ってくださったりと食品も集まり出しました。私の力の及ばないところで人々が当法人の活動のために動いてくださっていることを思うと、改めて、この仕事は神様から託されたものなのだと思い至り、皆様がこうして応援してくださっている以上、私も落ち込んではいられない、頑張らなければと鼓舞され力を頂きました。

コロナによる影響が大きかったのは、野菜農家よりもむしろお菓子やご飯の素などの加工品の製造業者でした。これらはお土産店で販売されることが多く、観光客が激減してしまったためでした。当法人としては、首都圏に直接伺うことができなくなった代わりに宅配便での受注を始めましたが、その際に、特に苦戦している商品を皆様にお知らせして応援買いをお願いさせていただきました。「福島やさい畑便り」でもこの現状をお知らせさせていただきました。

当法人は「非営利活動」ですので、皆様からのご寄付等で運営していくのですが、ともするとそういう皆様に申し訳ないという思いになってしまったりするのですが、それはどこかで自分のためという意識が働く時で、そうではない、福島の困った人々のために応援してくださっているのだ、そういう人々のために働くように私が遣わされたのだと基本に立ち返る時、皆様と共に協力してこの危機を乗り越えていくための力が出てきます。

私たちはまた、「フードバンク二本松」として生活困窮者の支援もさせて頂いております。コロナ禍の打撃を受けたのはご存じのように非正規で働く人々でした。解雇や雇い止めのために仕事を失って途方にくれている人々でした。SOSが発信されたシングルマザー80世帯、福島大学と会津大学の苦学生や留学生400人に食料を提供させていただきました。その他、個人的に困窮してしまった方々、引きこもりの方々、大震災以降の被災者等々にも支援させて頂いております。それらの食料は篤志家の皆様から無償提供されたものです。また、食品の企業で印字ミスなどの理由で販売からはじかれたもの、団体で保管している災害用保存食の賞味期限が近くなってために入れ替えるからといった理由で提供頂いたものです。

生活困窮者の自立支援も行われていますが、高齢者の場合、これから働けるわけでもなく、自立のためには生活保護の受給しかないと思われます。それが可能になるまでの隙間にフードバンクとして入り込んでご支援させて頂いています。

以前は、困窮者というとホームレスの人々が対象でしたが、災害が多い今日では、普通に生活を送っていた人々が突然困窮者になってしまいます。中にはプライドがあって施し(支援)は受けたくないという方もおられますが、自分自身が予期せずに困窮者になる可能性が高い昨今、柔軟性を持って支援をする側・受ける側の両方を経験してみると、他者への無関心から脱却することができ、お互いに助け合う社会が実現していくのではないでしょうか。

「み旨が天に行われるとおり、地にも行われますように」という主の祈りが実現するように働くのが私たちの役目だと思っております。

最後に、放射能被害という農業・食料危機を経験した福島として、無農薬・無添加の安全な野菜作りを推進して人々の意識改革もしていきたいと念願し、動き始めたことをお知らせしたいと思います。「あだたら食農school farm」という組織を県内の有識者が中心になって共同で立ち上げました。今増えている発達障害が農薬に由来することが分かっています。地球破壊の3割は農業(農薬使用)が原因です。我々は自分が住む地球を破壊する道を歩んでいます。神様は私たちが生きるために必要なものは全てこの地球上に備えて下さっていました。人間の科学の知識がそれを破壊しています。大事な地球資源を守り次世代に残すために、私たちは考え働いていかなければならないと切実に感じています。それを人々にも訴えていきたいと考えています。

 

やぎぬま・ちかこ
東日本大震災後、原発事故の風評被害で苦しむ福島の農家を救いたいと、NPO法人 福島やさい畑~復興プロジェクト~を設立し、活動している。

 


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