あき
私が小さかったうん十年前。
近所のおじさんおばさんからよく怒られた。
塀によじ登って蝉をとっていたわたしに「そんな高いところ上っちゃだめだよ」
沼でザリガニをとっていて池に落ちておぼれて泥だらけのわたしを
「危ないじゃないか。見ていたからよかったものの。だめーー!!」
と尻を叩かれた。
今思えば、尻を叩いたのではなくついた泥をはたいて落としてくれたのかもしれない。
子どもたちをおかあさんの目が届かなくとも近所のおとなたちが見てくれていた。
わたしもおとなの真似をして「だめじゃないか」と年下のこどもの面倒を見ていた。
今思えば懐かしい時代。「さざえさん」の時代。近所が一緒に暮らしていた。
昨今は、叱るおとなもいなくなったし、近所に誰が住んでいるかも希薄でわからなくなった。
仕事で地方に行くと、朝通りすがりのわたしにヘルメットをかぶった子どもたちが「おはようございま~す」と声をかけてくれることがある。
懐かしくて、にこっと「おはよ~」と返す。
都会では、「知らないおじさんには近づくんじゃないわよ」と教える昨今。
やっぱりいいなぁと思う。
わたしが毎日乗るバスがある。
時たま昼間に乗ったとき、おかあさんの手をにぎりながら一緒に降りるこどもが
「ありがとうごじゃいましたぁ」とたどたどしく声を張り上げる光景を何度か見た。
確かに近所のおとなたちが一緒になってこどもを見る光景は久しく見られなくなった。でも小さいときから「ありがとうございます」の感謝の気持ちを声にだすことを教えているおかあさんがたもいる。
バスでお年寄りに席をゆずるようお子さんを促すおかあさんもいる。
捨てたもんじゃない。
要は、感謝ややさしさを教えるおとなの姿勢。
いま「こどもの家」という小さな活動に係っている。
「こどもの家」は、学校から帰ってきた子どもの世界。
午後、三々五々に学校から帰ってきたこどもたちは勉強したり、
好きな活動を一緒に行う。
午前中は、小さなお子さん連れのおかあさんや妊婦さん。
近所のお年寄りのお茶のみ場となる。
一緒に集うことで、一人で抱えている悩みを話すおかあさん。
みんなで好きなことを話す場であると同時に互いに顔見知りになっていく。
近所で「帰ってきたのぉ~」「はやいねぇ」と子どもに声をかけるおばさんも
増えてくるかもしれない。
昔、おかあさんの目の届かない子どもたちを近所のおじいさん、おばあさんの目が届いていたように。
(カトリック横浜教区信徒)