日本には24節気という暦があります。今、私たちが生活の中でよく使うのはそのうちのいくつかです。すぐに浮かぶのは、立春、春分、夏至、立秋、秋分、冬至などの6〜8ぐらいのものだと思います。太陰暦を使用していた江戸時代までは、1年を24に等分し、各季節の名前がついていました。それは季節に準じ、日本の風土にあった言葉でもあります。一人の女性がお茶と出会い、人生を生きていく25年間を描いた映画が『日日是好日』です。
大学時代に一生をかけられる何かを見つけたいと思う典子(黒木華)ですが、学生生活は瞬く間に過ぎ、20歳になった現在も何も見つけられず、そんな自分に嫌気がさしている時、母親(郡山冬果)から「タダモノじゃない」という武田先生(樹木希林)にお茶を習うことを勧められます。当人はまったく乗り気ではないのですが、同じ年の従姉妹、美智子(多部未華子)から「一緒にやろう」といわれ、渋々習いに行きます。
稽古初日、さっそく茶室に通され、稽古が始まりますが、帛紗(ふくさ)さばきや棗(なつめ)の作法など、なぜそんなことをするのか、理由も意味も分からないことばかりです。どうしてそんなことをしなければならないのか質問すると、「意味なんてわからなくていいの。お茶はまず『形』から。先に『形』を作っておいて、その入れ物に後から『心』が入るものなのよ」といわれます。お稽古は続いていきます。
美智子は貿易会社に就職を決めますが、典子は志望していた出版社を落ち、就職をあきらめてしまいます。違う道を歩み出した二人ですが、お茶のお稽古は続いていきます。その後、大規模なお茶会に参加し、想像していたものとは違っていたり、さまざまなことが淡々と描かれていきます。
美智子がお茶のお稽古をやめても、出版社でアルバイトをしながら、典子は続けていきます。お茶を続けることで、武田先生のいうことが少しずつ分かるようになってくると同時に典子の人生も変わっていきます。その中でキーワードになるのがフェデリコ・フェリーに監督の「道」という映画です。幼い頃に見て全く分からなかった映画「道」が典子にとって大きな転機になっていきます。それはどんなことなのかは皆さんが映画館で見てください。私はこの「道」という映画が大好きで、これまで何度となく見てきましたが、典子の道に対する感想には大きくうなずくものがありました。
茶道の日々を描いているように一見見えますが、その中に深い人生への示唆がたくさん含まれています。特に武田先生の言葉一つひとつには深い意味があります。たとえば、「世の中にはすぐ分かるものとすぐに分からないものの2種類がある。すぐに分からないものは、長い時間をかけて、少しずつ分かってくる」とか、意味を考えようとする二人に「何でも頭で考えようとするからそう思うのね」など、一見なんでもない言葉のようですが、その言葉に深い意味があること、そして生き方を示唆しているものなのかもしれません。茶道を学ぶことによって日々成長していく典子の姿をぜひ映画館でご覧ください。
中村恵里香(ライター)
10/6(土)、7(日)、8(月・祝)先行上映
10/13(土)シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、イオンシネマほか全国ロードショー
監督・脚本:大森立嗣、原作:森下典子『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫刊)
出演
黒木華 樹木希林 多部未華子 鶴田真由 山下美月 鶴見辰吾
製作幹事:ハピネット、ヨアケ/配給:東京テアトル、ヨアケ
コピーライト:©2018「日日是好日」製作委員会
Twitter:@nichinichimovie
Facebook:@映画『日日是好日』
公式ホームページ:http://www.nichinichimovie.jp
10月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国ロードショー!