スペイン巡礼の道——エル・カミーノを歩く 34


古谷章・古谷雅子

5月28日(日) カリオン・デ・ロス・コンデス~テラディージョス・デ・ロス・テンプラリオス(1)

歩行距離:25.8km
行動時間:6時間

快適な個室だったので、朝もいつもよりのんびり過ごした。6時20分出発。昨日確認しておいたカリオン川を渡る道を進む。国道を横切ってからは静かな田舎道になる。国道を行けば途中にムデハル建築の教会や古代ローマ時代の遺跡があるのだが、やはり静かな田園の中の巡礼路を行くことにした。水が近いせいか思ったよりも木立があり樹種も多様だ。ニセアカシヤもある。カッコウの鳴き声を聞きながら10kmを順調に歩き、8時15分大休止。この先は木々がなくなりまた一面の麦畑で右側は刈入れ間近な色だ。

17km近く歩きカルサディジャ・デ・ラ・クェサの町。カルサダとは古代ローマ時代の石畳の道のことだそうだ。ベンチと泉があり、一休みしていると太ったネコが何匹も走ってきて私たちの食糧を取ろうとする。最初はおねだりだったのが次第に暴力的になり辟易して早々に出発した。樹木や建物がないと黄色い矢印はないが、道中にはモホンというホタテ貝の意匠でエル・カミーノを示す石の道標がある。それでも迷いやすいところもある。しかし今はGPSが解決してくれる。

章はいわゆるガラケーなるdocomo携帯を持っていった。これは家族との間の緊急事態や万が一の場合の通信用で、基本的には無料のWORLD WINGを申し込んであれば使った分だけの安い料金で済む。その他には雅子がAndroidスマホ、章がiPad miniタブレットを持っていたが、特別な料金契約はせず、契約電波を使う通信機能は切っておいた。こうしておけば料金は日本での例月分だけだ。スペインでは大方の宿舎でfree Wi-Fiがあり、宿泊手続きの時にパスワードを教えてくれる。それでインターネットがつながるのでメールや新聞も日本と同様に受送信できる。

問題は屋外、特に平原や山を歩いている時だ。道案内には地図が必要だが、Google mapはインターネット環境がないとみられないし、ダウンロードして保存できない。しかし、事前にダウンロードしておける優秀な無料地図もある。GPS機能は契約電波とは無関係にタダで キャッチできるので地図と連動させれば現在地は常に確認できた。スマホにはOpenCycleMap、タブレットにはMAPS.MEという地図を出発前に入れていった。特に前者は自転車旅行者用に細い道や水場などのポイントが入っている。

「Geographica」というアプリで一日の距離、高低差、時間、トラック(軌跡)等の行程を記録することもできた。余りに便利だと昔のような読図の醍醐味や心細さがないのが贅沢な悩みになってしまう。とはいえ、バッテリーが無くなれば使えないのだから、基本はやはり紙の地図とコンパスということになる。「日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会」の詳細なガイドブックと初回に現地で入手したミシュランの地図こそが頼もしい道連れとなった。アルベルゲやホテルの場所や収容人数、距離数が予め分かるのでペース配分、日程調整に無駄がでない。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

16 − eleven =