齋藤克弘
これは五線譜に限ったことですが、わたしたちが音楽で使う楽譜は、左から右へと流れていきますよね。でも、なんで左から右へと進んでゆくのでしょうか。疑問に思ったことはありませんか。
「そういうふうに昔から決まっているからだよ」なんて言う人もいそうですが、では、だれがいつ、そういう風に決めたんでしょうか。それを考えたことはありませんか。
すぐに答えを出す前に、少し、回り道してみましょうか。
わたしたちが使っている五線の楽譜、五線譜はヨーローッパでできたものだということはご存じだと思います。では、五線譜っていつごろできたのでしょうか。というのはウィキペディアとかで調べられそうですがだれが考案したかは書かれていません。
楽譜って最初から五線だったのでしょうか。実は違うんですね。最初の楽譜は、なんと、線なんかなかったんですよ。じゃ、どういう風に音をあらわしたのかと思いませんか。実は、最初の楽譜って、今わたしたちが習うドレミ……という絶対的な音の高さは表していなかったんです。
じゃ、どうやって音を覚えたの、ということですが、これが全部耳で聞いて覚えたんですね。おっと、最初の話からかなり外れてきましたが、最初の楽譜は、音楽のニュアンス=少し早く歌いましょうとか、前の音と同じ音で歌いますよというようなものだけを表すものだったんです。
しかも、最初の楽譜は楽器の演奏で使われたのではなくて、教会で歌われる聖歌(グレゴリオ聖歌)のうたい方の覚書のようなものと書かれたのです。そして、ご存知のようにグレゴリオ聖歌はヨーロッパの修道院で歌われていたラテン語のものだった。ラテン語は左から右へを書きますよね。だから、楽譜も左から右へと進んで行く。これでやっと答えにたどりつきましたね。
さて、ここからが大切なのですが、先ほども書いたように、楽譜ができる前には歌詞もメロディーも全部覚えなければならなかったのですね。これも大変なことですね。皆さんは歌詞を見ないで何曲くらいの歌を歌えますか。楽譜ができたという言ことは、歌詞はもちろんですがメロディーも見て歌えることができるようになった、言い換えれば、楽譜ができる前、歌は「記憶」しなければならなかったのが、楽譜ができたことで歌を「記録」できるようになったということで、それは「記憶」というある意味、曖昧なものから、「記録」という正確なもので伝えられるようになったということも意味しています。伝言ゲームがカンペになったようなものでしょうか。」(典礼音楽研究家)
毎号楽しみにしています。楽譜の期限はわかりました。ドレミファの起源も教えてください。「そう急ぐな」ですか。はいはい、分かりました。