ヘレン・K・ボンド著『ポンティオ・ピラト:歴史と解釈における』と『カイアファ:ローマの友、イエスの裁判官?』

福音書が物語るイエスの受難史の中で、大きく立ちはだかるローマとユダヤそれぞれ体制の代表者総督ピラトと大祭司カイアファ。この二人の人物の歴史的実像はどのようなものなのだろうか。特にピラトは使徒信条を唱える際に繰り返し名を告 Continue reading


ジョン・オマリー『トリエント――公会議で何が起こったか』

今年は、宗教改革500年にあたり、ルターに始まるあの運動が盛んに回顧され論じられている。この歴史的反省は、やがては、近代カトリック教会の揺籃といえるトリエント公会議にまで広げられていくであろう。更新された史料状況に基づく Continue reading


イヴォン・シャーウッド著『聖書テクストとその後の生命・西欧文化におけるヨナの生存』

たった4章だけの旧約聖書の小預言書、ヨナ書。そこに登場するヨナは、巨大な魚(鯨とは書かれていないが自然に想像してしまう)に呑み込まれたエピソードで有名である。この話のゆえにキリスト教美術でも人気がある。このヨナ書を、ヨー Continue reading


デイヴィッド・アルヴァレス著『ヴァティカンのスパイ・ナポレオンからホロコーストまでの諜報活動と陰謀』

教皇のもつ国際政治における働き、影響力、存在感は、カトリック系のメディア以外でも注目の的であることは周知であろう。その外交に不可欠な教皇庁の情報活動を主題とする本書。近代史の知られざる一面に光を投げかけている: デイヴィ Continue reading


ケスター・アスプデン著『要塞教会:英国のローマ・カトリック司教と政治 1903〜63』

EU離脱との話題で国家の針路に関心が高まる英国、その中でローマ・カトリック教会はどのような立ち位置にあるのだろうか。20世紀の軌跡についての概観の書を紹介する。なお文中、英国教会と記さされるのは英国国教会、イングランド国 Continue reading


ロバート・クリーグ著『ナチ・ドイツにおけるドイツ神学者』

最近の欧米での排外主義の台頭は、20世紀の悪夢ともいえるドイツ・ナチズムの記憶を呼び起さずにはいられない。キリスト教の立場から、あのナチズムと対決した教会指導者・神学者たちについて物語る本を紹介し、認識を新たにしてみたい Continue reading


『「神はそれが極めて良かったと見られた」:カトリック神学と環境問題』

教皇フランシスコの回勅『ラウダート・シ:ともに暮らす家を大切に』(2015年、邦訳2016年)によって、環境問題に関するキリスト教の考え方や取り組み方があらためて注目されている。カトリック神学の世界でこのテーマへの関心が Continue reading


『神の美しさの鏡:聖書から初期カバラに至る神の女性イメージ』

神の女性性や母性を重視する傾向は、現代の神学思想のひとつの特徴といえる。このテーマを旧約聖書からユダヤ教の神秘思想までを含む大きな歴史的展望で探り出そうとした研究を紹介し、論評を加えながら正しいアプローチの道を考える: Continue reading