COVID-19:タイの様子


金子野吾(タイ在住)

閉鎖されたスーパーのフードコート

今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックに際し、準軍事政権下のタイでは3月末から厳しい対応が取られて来ました。国境の閉鎖、学校・飲食店・デパート・スポーツ施設などの営業禁止に加え、酒類の販売禁止・夜間の外出規制・国内の大規模移動を抑えるため「タイ正月」と言われるソンクラン(水かけ祭り)を平日化するなどのあらゆる手段で封じ込めが行われました。その結果として当初1日200人を超えていた新規感染者は4月末には10人を下回り、間もなくサービス業などを少しずつ再開できる見通しとなってきました。

政府の方針はとても明確で「保健を第一として、経済・社会の観点は参考とする」となっていますが、3月末頃に富裕層が普段使用している私立病院での患者受け入れがほぼ禁止された事もあり、経営者層からの経済優先の声もほとんど聞かれず、新型コロナは全国民の共通の敵と認識されている様に見えます。

手洗い場には洗い方の説明が書いてあります。

この10年ほどで海外の知識や文化を吸収し、急成長を遂げてきたタイの人たち独特の素直さは今回の危機に対しても発揮されており、こまめな手洗いと消毒・マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保といった事が既に習慣化されつつある事も状況を好転させることに繋がっているようです。

東南アジアで最もきれいと言われるタイのトイレ事情ですが、ここ1ヶ月でさらに衛生レベルが上がり、場所によっては日本以上のきれいさを獲得している気すらします。私たち外国人の受け止め方も最初は色々でしたが、一致団結して頑張るタイの人たちを見て、協力して一緒に頑張ろうという雰囲気が出来上がって来ているように感じます。

タイに赴任して7年目になりますが、ここまでの一体感を感じた事はこれが初めてです。余談ですが、交通事故大国のタイでは、例年ソンクランのある4月は300人以上の方が交通事故で亡くなります。しかし今年はソンクラン延期の影響で対前年90%以上の減になると言われており、この機会に交通安全の大切さなども実感してもらえたら良いなと思ってしまいます。

スーパー入り口には検温・消毒のブースが設置。マスクの着用義務のサインもあります。

さて、私の住むタイ東北部ウドンタニ県でも、この1ヶ月間はスーパー・薬局・テイクアウトのレストラン以外のほとんどの店が閉まり、町は静まり返っています。デパートは食品コーナーを残して閉鎖、入り口では検温が行われており、体温が大丈夫だと手を消毒してから入るように指示されます。コーヒーショップも席は無くテイクアウトのみです。エレベーターは足元に壁に向かって立つように印が付けられており、人数制限もかかっています。日本から見ると驚くほどの徹底ぶりではないでしょうか?

私の会社の食堂は手洗いと消毒を必ずしてから中に入るように導線が敷き、テーブルは1人ごとにパーティションを設置しており、他県に出かけた場合は2週間ハイリスクゾーンと言われる隔離エリアでの食事を義務付けています。共用だった飲料水のコップはマイカップ制へ変更、トイレは1日4回の徹底消毒タイムを取っています。神経質に見えるかもしれませんが、製造業ではこの方式が既に「普通」になっています。

会社の食堂には個別ブース設置されています。

というのも、サービス業への厳しい営業制限の一方でタイの屋台骨である自動車産業を中心とした製造業には全く操業制限がかかっていないため、この状況下でなんとか操業を続けようと各社様々な取り組みを行い、それがSNSに乗って全国に流れて数日で新しい「普通」になって行ったためです。私もSNSを見てトイレの一斉消毒タイム等を真似させてもらいました。

タイは熱心な仏教国ですが宗教活動も例外ではありません。仏教の寺院もこの期間中人を集める行事を中止しています。お坊さんが鉢を持って家々を回る托鉢は禁止になっていないようですが、お坊さんに感染が広がらないようにパッケージに入ったままの食事を渡すことや、もち米を手で分ける際には手袋をつけて分ける事が推奨されているなど、それぞれできる限りの対策をしているようです。ウドンタニにはカトリックのカテドラルがありますが、こちらも隣接の学校とともに閉鎖され、英語サイトではオンラインミサの案内が出ていました。

マーケットの屋台でもマスク・手袋姿の人がほとんど

ここまでやってようやく感染第一波の封じ込めに成功したタイですが、もともと家計の負債がGDPの1年分を超えていると言われる状況だけあって、今後生活の困窮が心配されています。サービス業の1ヶ月を超える営業禁止に加え、ここまで頑張って操業を続けて来た自動車関連工場も多くが生産調整により操業停止を余儀なくされだしたためです。次は経済的な困難の波が来る、そう予感させられる状況ですがなんとか力を合わせてこの危機を乗り切って行けるよう私たちもできることを続けています。

 


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