ネラン神父の遺志を継いで――大船に「カフェバー欅(けやき)」を設立

渡邊美紀子

キリスト教は出会いである。人との出会いから、キリストとの出会いへ導かれる。私にとって、その出会いはフランス人ネラン神父とのそれである。希望をもって入学した大学生活の後半で、私は何とも言えない孤独感と空虚感に襲われていた。そんな時に、私はネラン神父に出会った。彼の口から出る一つ一つの言葉が私の乾いた心に砂漠の水のように染み通った。彼は何を考えるべきかを示唆し、プラトンやベルグソンなど質の良い材料で、人間や人生についての本質的な問題を考えさせた。もちろん、彼と共に福音書も読んだ。彼はあまり説明しないが、生き生きしたキリスト像を浮かび上がらせるのが上手だった。誰もが絶対=神を希求していること、神への到達への道がキリストという生きた存在にあることを発見させた。こうして、私も洗礼を受けた。

彼が私たち弟子に望むことはただ一つ、キリストを知らない人にキリストを伝えることである。彼自身、キリストをしらない99%の日本人への宣教に、62年の日本滞在の全てをささげた。長年学生を相手にした後、60歳になった彼はサラリーマンへの宣教を目指し、新宿にバーを開店した。信者になろうがなるまいが、そこで多くの人がキリスト教の神髄に触れたのである。

私は10年近く暮らしたフランスから帰国し、いくつかの大学で15年間フランス語を教えた後、ネラン神父に「両親からの遺産でカフェを開くつもりだ」と告げた。彼はとても喜んでくれた。商売の経験がない私は、まず1年間、彼が開いた新宿のバーで働かせてもらった。その経験から、人がくつろぐにはアルコールが必要だと考え、カフェではなくバーを開くことを決めた。幸運にも、同じ大船教会の信者で、すぐれた建築家の岡秀世氏が、私の無謀な冒険を可能にしてくれた。場所探しから、建設工事、開店までに必要な全てのことを迅速、的確にやってくれたので、2010年11月に「カフェバー欅(けやき)」は開店した。それからすでに6年、試行錯誤、紆余曲折はあったが、お客様に励まされ、常連客も出来た。

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ネラン神父

キリスト教を知ってもらうため、またお客様同士の交流のため、「けやきニュース」という機関紙を年に4~5回発行し、ネラン神父が書かれた文と、お客様の文を合わせて掲載している。コンサート、落語会、映画会などのイベントも随時行う他、フランス語教室も開いて幅広い人との出会いを心掛けている。営業は水~土が18時~23時。日曜日は昼の11時~14時。8月は休業。志を同じくする方は、ぜひ協力してほしい。心から待っています。

人を知り、人とつながるには長い時間がかかる。星の王子様のキツネが言うように“忍耐”が必要だ。しかし、様々な方との出会いは尽きない喜びの源泉である。

公式サイト http://cafebarkeyaki.web.fc2.com/