第8章 成功 Success


本連載は、イエズス会のグレゴリー・ボイル(Gregory Boyle)神父(1954年生まれ)が、1988年にロサンゼルスにて創設し、現在も活動中のストリートギャング出身の若者向け更生・リハビリ支援団体「ホームボーイ産業」(Homeboy Industries)(ホームページ:https://homeboyindustries.org/)での体験談を記した本の一部翻訳です。「背負う過去や傷に関係なく、人はありのままで愛されている」というメッセージがインスピレーションの源となれば幸いです。

 

ギャング出身*の親しい仲間たちにささげる(*訳注:「ギャング」とは、低所得者向け公営住宅地等を拠点に、市街地の路上等で活動する集団であるストリートギャングを指します。黒人や移民のラテン・アメリカ系が主な構成員です。)

 

グレゴリー・ボイルGregory Boyle(イエズス会神父)

訳者 anita

 

 「成功談を聞かせて」と私はよく言われます。これは理解できます。実際、成功談こそ、私たちが語りたいものですから。では、なぜこれを言われるたびに、私はこめかみをぎゅっと締めつけられるように感じるのでしょうか?きっとその原因の一つは、自分が詐欺師だと私自身が確信しているからだと思います。

(……)

 最終的に、あなたは成功者ですか? 私は、必然的に、マザーテレサの解釈にはげまされます。「私たちは成功ではなく、忠実さを求められています」。この区別は、私が日々の後退の不安から身を守るために役立ちます。歩前に進み、歩後ろに下がる浮き沈みを繰り返すにあたり、自分を防御する必要があるのです。毎日、落胆と反抗につまずき、すべてが混とんとします。とはいえ、これが神の思し召しのように思います。自分では抱えきれない重荷を抱えた人たちと一緒に過ごすことを一度決めた場合、どんな賭けも成立しません。のどから手が出るほど成功を欲しがると、忠実であることや自分の目の前に座っている人の本当の姿を見ることができなくなります。その日の自分にできる唯一の最善策が、自分が正しいと信じる方針と取り組み方をただにぎりしめることである場合も多々あります。もし結果と成果を欲しがる心を手放すならば、成功は、神が決める領域となります。私は、忠実であり続けるだけでも、十分難しく感じます。

 

TATTOOS ON THE HEART by Gregory Boyle

Copyright © 2010 by Gregory Boyle

Permission from McCormick Literary arranged through The English Agency (Japan) Ltd.

本翻訳は、著者の許可を得て公開するものですが、暫定版です。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

14 + seven =