第4章 水、油、炎 Water, Oil, Flame


本連載は、イエズス会のグレゴリー・ボイル(Gregory Boyle)神父(1954年生まれ)が、1988年にロサンゼルスにて創設し、現在も活動中のストリートギャング出身の若者向け更生・リハビリ支援団体「ホームボーイ産業」(Homeboy Industries)(ホームページ:https://homeboyindustries.org/)での体験談を記した本の一部翻訳です。「背負う過去や傷に関係なく、人はありのままで愛されている」というメッセージがインスピレーションの源となれば幸いです。

 

ギャング出身*の親しい仲間たちにささげる(*訳注:「ギャング」とは、低所得者向け公営住宅地等を拠点に、市街地の路上等で活動する集団であるストリートギャングを指します。黒人や移民のラテン・アメリカ系が主な構成員です。)

 

グレゴリー・ボイルGregory Boyle(イエズス会神父)

訳者 anita

 

 ホームボーイ産業の落書き清掃チームに23歳のミゲルが働いていました。私たちの下で働く働き手の大部分と同じように、以前彼が拘留されていた時期に私は彼と知り合いました。彼はとても感じのよい子でした。彼の快活さは、家族から完全に見捨てられたという境遇を考えると、とても驚くべきものでした。家族は、彼を拒絶するに先立ち、彼をいじめ、虐待し、散々傷つけました。ある年の元旦、彼は私に電話をくれました。

 「明けましておめでとう、G(ジー)」

 「やあ、どうもありがとう、ドッグ(番犬のように頼れるヤツ、という意味の呼び名)」と私。「ミゲル、クリスマスの時、ちょうど君のことを考えていたんだよ。クリスマスは何をしていたんだい?」私は、ミゲルを迎え入れてくれる家族がいないことを承知の上で質問しました。

 「ああ、だからさ、オレはここにいたぜ」と、ミゲルは一人で暮らすとても小さなアパートのことを指します。

 「たった一人で?」

 「いや」と彼は急いで言います。「清掃チームのヤツらのうち、オレみたいにクリスマスにどこにも行くあてがないヤツらを呼んだのさ」

 自宅に招いた5名の名前を挙げてくれました。全員、ライバルギャングの元メンバーです。

 「そうかい」と私は言いました。「それはとてもいいことをしたね」

 こうして彼の話を聞いていると、私の好奇心がむくむくと頭をもたげてきました。「ところで、何をしたんだい?」

 「うん」と彼は言いました。「信じらんねえだろうけどよ…オレ…ターキー(七面鳥)を調理したんだぜ」。受話器から彼の誇らしげな様子がじかに伝わってきます。

 「へえ、すごいじゃないか。どうやって?」

 「ほら、あれだよ」と彼は言いました。「スラム街方式さ」

 私は、そのレシピにはなじみがないことを伝えました。

 彼は、惜しげもなく秘密を伝授してくれました。「だからさ、その、ターキーにバターのかたまりを塗ってさ、塩とこしょうを大量にぶちまけて、レモンを何個かしぼってからオーブンに入れるのさ。まともな味がしたぜ」

 私は言いました。「それはすごいね。ターキー以外のつけ合わせは?」

 「いんや。ターキーだけさ」と彼が言いました。ここで小声になりました。「おうよ。オレら6人、オーブンを見つめて座りながらターキーが焼きあがるのを待ったのさ」

 この6人の孤児たちが一緒にオーブンを見つめる姿ほど、聖なるもので、平凡なものが他にあるでしょうか?律法と預言者のすべてが、このつつましい聖なる台所で実現したのです。

 

TATTOOS ON THE HEART by Gregory Boyle

Copyright © 2010 by Gregory Boyle

Permission from McCormick Literary arranged through The English Agency (Japan) Ltd.

本翻訳は、著者の許可を得て公開するものですが、暫定版です。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

2 + ten =