『聖ニューマンの生涯 教会の改革に生涯を捧げた転会者の心の物語』


柳沼千賀子[著] 阿部仲麻呂[解説] 『聖ニューマンの生涯 教会の改革に生涯を捧げた転会者の心の物語』
教友社、2021年 定価:1540円 192ページ


2019年にジョン・ヘンリー・ニューマンという人物が列聖されました。列聖に際して、カトリック系メディアを中心に報道や特集があったため「名前だけは聞いたことがある」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが、ニューマンは文学者や神学者として研究されてきたため彼に関する著作は難解な本が多く、詳しく知るには敷居が高いと感じている方も少なくないかもしれません。そのような方々におススメしたい本が、日本ニューマン協会会員の柳沼千賀子さんによるニューマンの伝記と阿部仲麻呂師による神学的解説の二部構成からなる『聖ニューマンの生涯』です。

ジョン・ヘンリー・ニューマンは1801年にロンドンの聖公会の家庭に生まれました。ですが、母の先祖はフランスから迫害を避けて亡命してきたカルヴァン派(ユグノー)であり、ニューマン少年自身もカルヴァン派などのプロテスタント神学の影響を受けました。また、啓蒙主義の本なども読んでいたニューマン少年は、様々な思想に触れながら、聡明な青年として成長していきました。

1816年にオックスフォード大学に入ったニューマンは、当初は法律家の道を志しますが、召命から聖公会の司祭になることになりました。1830年代に英国で「オックスフォード運動」と呼ばれる聖公会の刷新運動がおこると、ニューマンはその中心人物の一人として活躍しました。ですが、「オックスフォード運動」や教父の研究を通じて、ニューマンは次第にカトリック教会に惹かれ始めます。聖公会からカトリック的と批判されたニューマンは、熟慮と深い祈りの末、1845年にカトリック教会に転会しました。

カトリックの司祭となるためにローマに留学したニューマンは、オラトリオ会の一員となります。なお、オラトリオ会とその創設者フィリポ・ネリに関しては、本書の著者である柳沼千賀子さんによる『聖フィリポ・ネリ 喜びの預言者』という本を紹介していますので、興味のある方はそちらもお読みになってください。

さて、カトリックの司祭となったニューマンは、英国のバーミンガムという街でオラトリオ会を設立します。司牧や大学の総長、転会者ニューマンのもとには、聖公会とカトリック教会の双方から一部の心ない誹謗中傷の声が浴びせられましたが、彼はそうした非難に負けずに司牧や執筆、教育などに力を注ぎました。カトリック教会史としては第一ヴァティカン公会議の時代でしたが、彼の神学は第二ヴァティカン公会議の精神を先取りしていたとも評されます。

 

ニューマン自身の日記や手紙、著作を引用しながら聖人の一生を活き活きと描いた『聖ニューマンの生涯』は、日本ではあまり知られていない19世紀英国の宗教事情にも触れられており、初学者にも優しい内容になっています。また、『キリスト教教義発展論』や『アポロギア』といった彼の代表的著作の執筆背景と要約を学べるうえに、坪内逍遥ら日本人とニューマンの接点も知ることができます。『聖ニューマンの生涯』を手に取って、新たに列聖された聖人の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

石川雄一(教会史家)
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