福音宣教とメディアについて 紙媒体とインターネット媒体


「キリスト新聞」編集長 松谷信司

まずは知られる工夫と覚悟から

私たちは現代日本においてメディアや宣教を語る上で、教会やキリスト教は「そもそも知られていない」という大前提から始めなければならない。すでにこの世界にどっぷり浸かってしまった「ガチ勢」(熱心な古参信徒)にとってはおなじみかもしれないあの新聞もあのサイトも、あの教会も、おそらく一般の非信徒(ノンクリスチャン)にはまったくと言っていいほど知られていない。

試しに自らのメディアや教会、個人名で「エゴサーチ」(ウェブまたはSNS上で検索)してみるといい。匿名による誹謗中傷やアンチコメントが引っかかればまだいい方で、自身の発信する情報以外に何も検索されないようであれば、世の中に存在すら認識されていないと危機感を抱くべきである。あるいはグーグルの機能を駆使してホームページの閲覧数、SNSのフォロワー数(アナリティクス)、動画の再生回数を他と比べてみてもいい。おそらく、想像以上にまったく見られ(読まれ)ていないことに愕然とするはずだ。

多くの場合、そうした指摘は「量より質」という言い訳で一蹴されてきた。果たしてそうだろうか。「人はなかなか集まらないが、教会は数ではない。質が大事」と言いながら、どこかで数を増やすことや広く知らしめることを諦めてはいなかっただろうか。「祈りと信仰があれば、いずれ伝わる」「普遍的な真理だから小細工をする必要はない」「分かる人にはわかる」「人手とお金がない」といった「できない」理由付けも、工夫が足りないという意味では怠慢とのそしりを免れない。当然ながら、どんなに質の高い情報やコンテンツも、人の目に触れなければ何の意味もなさない。

2016年、晴佐久昌英神父をはじめ教派を異にする牧師3人との座談会をまとめた『キリスト教のリアル』をポプラ社から出版した。「歴史や聖書、教義の入門書はあるが、世間が聞きたいと思っている素朴な疑問に答える本がない」というのが、出版の理由だった。座談会の収録に先立ち、担当編集者があらかじめ社内で質問を募ってくれたところ、「聖書は暗記しているの?」「映画にあるような除霊はしたりするの?」「普段着は何を着ているの?」「お子さんに対してキレたり、夫婦間で罵倒したりすることはあるの?」など、実にさまざまな疑問が多数寄せられた。

出版後の反響からも、牧師や神父、あるいは教会やキリスト教の実態について、想像以上に知られていないということを痛感した。信者数「1%未満」なのだから当然と言えば当然の結果である。しかし、みんな本当は聞きたがっている。キリスト教の布教やプロパガンダは「ノーセンキュー」だが、「知りたい」という潜在的ニーズは無限にある。つまり、信じるつもりはないが知りたいという「にわかファン」が相当数いる。逆に言えば、信者数が少ないからこそ、広大な市場の可能性が開かれているのだ。

「キリスト新聞」2021年11月11日号

これまで、日本の教会をはじめとするキリスト教メディアは、「伝えたいことを伝える」(宣伝)ことに専念してきた一方、「信じるつもりはないが知りたい」という人たちが「聞きたいこと」に答えるという広報的な側面はないがしろにしてきた。結果、布教や伝道が「ガチ勢」による一方的な「上から目線」の押し付けと避けられてきたきらいがある。例えば教会のホームページでよく見る「Q&A」。外部の人が本当に知りたいのは、「プロテスタントとカトリックの違い」でも「『アーメン』の意味」でも「洗礼を受ける方法」でもなく、駐車場や授乳室の有無、予約の要不要、有料か無料か、着ていくもの、持っていくものは何か、といった情報のはずである。

選挙の投票率がなかなか上がらない一因は、無党派(無関心)層の行動変容にもつながるような言葉が語られていないから。同様に、まずは聖書にも教会にも宗教にもまったく関心がない人々、しかし潜在的にはキリストの福音を必要としているであろう読者層に、どうやって目を向けてもらえるか、そのためのハードルをどこまで下げられるかを徹底的に研究し、そこに届く言葉を紡ぎ出す知恵と工夫が不可欠である。

世間に「知られていない」という意味では紙もインターネットも同様だが、その入り口を広げるツールとしてのデジタルコンテンツは、既存の旧メディアよりはるかに大きな可能性を秘めている。コロナ禍を経て、世界はますます激変の渦中にある。対面での礼拝ができなくなり、あれほどインターネットに消極的だった教会も、ようやく重い腰を上げた。デジタルの「画面」に苦手意識を抱いていた高齢信徒も、気づけばスマホを使いこなしている。私たちの教会が有する「変わらない真理」は、伝え方やメディアのあり方を「変えなくていい」理由には決してならない。やるべきことは山ほどある。

 


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