梅切らぬバカ


自閉症というと、どんなイメージを持っているでしょうか。どこか怖いなんてイメージを持っている人もおられるのではないでしょうか。自閉症の人は親しくなると、人見知りをしないので、とても親しみやすいという特徴があります。

自閉症の人を描いた映画はけっこうあります。代表的な作品といえば「レインマン」でしょう。ドキュメンタリー映画では、今年公開された「僕が跳びはねる理由」などもあります。どちらかといえばドキュメンタリーの方が真の姿を描いていると感じることが多いようですが、今回ご紹介する映画はドキュメンタリーではありませんが、自閉症の人を取り巻く様子がよく描かれている作品です。

閑静な住宅街にある古民家に住む山田珠子(加賀まりこ)は、息子・忠男(塚地武雅)と二人暮らしです。忠さんと呼ばれている忠男は、自閉症です。時間にこだわりがあり、毎朝決まった時間に起床し、朝食をとり、決まった時間に家を出ます。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、引っ越してきたばかりの隣の里村家からは苦情が届いていました。

寄り添って暮らしている母と息子は、ささやかな幸せに満ちた日々を送っていますが、息子が50回目の誕生日を迎えたときに母は「このまま共倒れになっちゃうのかね?」ともらします。

ある日、忠男が通っている作業所の所長(林家正蔵)からグループホーム入居の案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決めます。ところが、時間にこだわりのある忠男は、環境の変化になじめず、ホームを抜け出してしまいます。そこで隣家の少年草太(斎藤汰鷹)に出会い、二人は、グループホームの存在を反対している今井奈津子(高島礼子)の経営する牧場に入りこみ、牛を連れ出してしまい、騒動となります。

この後は、ぜひ劇場に足を運んで観てください。隣家から苦情の来ている梅はどうなるのか、忠男はグループホームにいられるのか、そして珠子は……。

この映画は自閉症を取り巻く地域環境をよく表しています。グループホームの存在を苦々しく思っている近隣の人、必死に人々を守ろうとするグループホームで働く人々、客観的に物事を見ようとする役所の職員。

健常者と自閉症の中年男との共存、自分たちを守ろうとする地域の人々の気持ちが突き刺さってきます。障害者の生きる権利はどのように守られているのか、共存とはどのようなものかを示唆しています。

監督の和島香太郎氏は、タイトルに込めた思いを「人と関わっていく難しさに悩み、間違って切り落としてしまう枝もあると思います。そんな失敗や、よい方向に向かっていくプロセスを感じ取ってもらいたいです」と述べています。

(中村恵里香、ライター)

 

11月12日(金)より シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

公式サイト:https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/

公式Twitter:@umekiranubaka

 

スタッフ

監督・脚本:和島香太郎/製作代表:松谷孝征/エグゼクティブプロデューサー:市井三衛、槙田寿文、小西啓介/プロデューサー:本間英行、根津勝、矢島孝、深澤宏/共同プロデューサー:杉本雄介/音楽:石川ハルミツ/撮影:沖村志宏/照明:土山正人/録音:猪股正幸/編集:杉本博史/装飾:高橋光/記録:工藤みずほ/助監督:富澤昭文/音楽プロデューサー:木村 学/音響効果:勝亦さくら/ミュージックエディター:大森力也/制作担当:村山大輔/制作主任:入交祥子/ラインプロデューサー:岩田均

キャスト

加賀まりこ、塚地武雅、渡辺いっけい、森口瑤子、斎藤汰鷹、徳井優、広岡由里子、北山雅康、真魚、木下あかり、鶴田忍、永嶋柊吾、大地泰仁、渡辺穣、三浦景虎、吉田久美、辻本みず希、林家正蔵、高島礼子

配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020」長編映画の実地研修完成作品

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

2021/日本/77分/5.1ch/ビスタ/カラー

 


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