教育新時代:これからの子どもたちはなにを学ぶか(4)


やまじ もとひろ

知られていなかった東京都のスピーキングテスト

前回、東京都の公立中学校に通う生徒に対して、英語のスピーキングテストが始まることをお話したところ、いくつかの反響をいただきましたが、出てきたのは「知らなかった」、「ほんとに?」といったものがほとんどでした。

「知らなかった」というなかに、いま中学生のお子さんを持つご家庭さえあり、なかなか周知されていないな、とも感じさせられもしました。

東京都の教育委員会では、すでにHPや中学校を通じて啓蒙を進めていますので、中学生やそのご家庭が「知らなかった」というのは解せません。

ただ実施されてきたプレテストは卒業数カ月前の中学3年生の一部が対象でしたので、彼らの「実感」は後輩たちに伝えられることなく、中学校を巣立ってしまったことは想像できます。

ですから、現在通学している中学生がスピーキングテストを「我がこと」と受け取っていなかった可能性は十分ありますし、ご家庭もそうなのでしょう。このような企画を周知することの難しさを痛感したものでした。

 

東京都のスピーキングテスト1年延期

東京都中学校英語スピーキングテスト事業に係るスケジュール等の変更について(PDFはこちら

ところが6月11日、東京都教育庁は「東京都の中学校スピーキングテスト」の1年延期を発表しました(右図参照)。

筆者のところにも翌朝、教育庁担当者から連絡があり「スピーキングテストの都立高等学校入学者選抜(都立高校の入試)への活用も、当初予定されていた2021年度以降ではなく、2022年度以降となります」とのこと、東京都の準備は着々と進んでいただけにびっくりさせられました。

その理由はというと、周知がいきとどいていないことでもなく、大学入試改革で見られたような拙速からの心配が露呈したものでもありませんでした。1年延期を決断させた理由は、やはり「コロナ禍」にあったのです。

 

「コロナ禍」に屈することに

全国の学校で休校が続いたことで、文部科学省は5月、都道府県教育委員会などに対し、出題範囲や内容、出題方法について適切な工夫を講じるよう通知しました。

都内の多くの中学校は、6月から段階的に授業を再開しましたが、再開しても授業時間の確保が課題になっています。

そんななか、「スピーキングテスト延期」決定と同じ6月11日、東京都教育委員会は来春の都立高校の入試で出題範囲から除外する内容を公表しました。

除外されるのは、中3の教科書で学習する漢字(国語)、三平方の定理(数学)、関係代名詞(英語)など広範囲で重要な学習ポイントですが、中3の出題範囲を7カ月程度で学習できる分量に絞るための措置だと説明しています。

スピーキングテストの1年延期が同日に発表された以上、この措置と無関係とは考えられません。最も影響を受けたと思われるのが、本年11月~12月に予定されていた中学3年生全員(約8万人)に課す予定だった「スピーキングテストのプレテスト」です。

都の中学3年生が高校入試を受けるための出題範囲を7カ月程度に絞るとはいえ、その期間で他の学習内容すべてを学ばせるためには時間はいくらあっても足りません。

そのために、設定していたプレテストを断念する、ということなのです。最終確認のプレテストができないのですから、プレテストは1年延期、それにともなって本番のスピーキングテストも延期、その結果を都立高校入試に反映するのも延期、という構図だったのです。

 

周知のために前向きに捉える

連絡をくれた教育庁担当者のメールには、ここまで準備してきたことを延ばさざるを得ないことへの無念さがにじんでいました。

しかし、気をとりなおすように「1年延期することを前向きに捉え、本事業の周知を図ったり、問題や実施方法についてより一層の検証を行ったりすることで、適正に実施していきたいと考えております」と結ばれていました。

冒頭で述べたように、筆者も把握できていなかったほど、英語スピーキングテストの概要や、その結果が都立高校の入試得点に反映されることなど、重要な情報が都民への周知には至っていませんでしたから、「禍 転じて福」となり、スピーキングテストについて、みなさんの関心が高まることを願ってやみません。

 

やまじ もとひろ
教育関連書籍、進学情報誌などを発刊する出版社代表。
中学受験、高校受験の情報にくわしい。

 


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