閑話休題その4


大手電気会社の代理店に勤める床山さん。今日も元気に「よっ。いい天気だねぇ」と会社に現れました。床山さんは、わたしの直属の上司。
勤続うん十年のばりばりの営業マンでそろそろ定年を迎える年頃です。
長年の人付き合いの経験からでしょうか。その人間味溢れる情の厚い人柄はすごくお客さまに愛されています。ただほんの少しおかしな点がありますが、みなさんお許しくださいね。

いつものように製鉄会社構内で営業をするために電車にのった床山さんとわたし。いつもの乗換駅で混雑したホームに降りました。

突然「ちょっと貸して…」と携帯電話を貸してほしいと床山さんが声をかけてきました。どうも携帯電話を会社に忘れてきてしまったようです。
わたしの携帯電話を受け取ると、どこかに電話をし始めました。
きっと仕事の話を思い出したんだろうと隣で待っていましたが一向に話が終わりません。

そのうち、乗換の電車がホームに滑り込んできました。
仕方がないので電車の中に一人で入って床山さんが来るのを待っていましたが全然くる様子がありません。
とうとう発射のベルが鳴り響きました。目を離したわたしが悪いんです。立っていた床山さんが見当たりません。

“ありゃー、こりゃ発射に間に合わない”と慌てて電車を降りた途端電車は行ってしまいました。仕方がないのでホームに降りた私は、迷子の床山さんを探すしか手がありません。

“あっ 床山さん!!” 振り向いたわたしの脇を床山さんが通り過ぎました。
“あれっ どこに行くんだろ???”と見ると、床山さんの前をわたしに似た人が歩いてる。
「床山さーん」後ろから声をかけるわたし。
電話をしながら遠ざかる床山さんの姿はどこに向かっているのでしょうか。

ユニークな床山さんですが…いろいろ教えていただきました。
個別にお世話になったお客さまを夏の夕暮れお店に招待するとき、
店を何軒も見て回ります。「ここは個室が無い。個室じゃないと話しづらいだろ」
「この店は、客筋と趣味が合わない」「ここは、声が響く」「トイレが遠い」そして「高い」などなど。 ひとりのお客さまを招待するのに自腹で何軒もはしご。
一生懸命探したお店の中から一番のお店に招待。 この心配りが大事なんだなぁ。

(あき)


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