母と暮せば


復活というテーマで思い出す映画はたくさんありますが、キリストの生涯を描いたものを外して死者が復活するということで映画を探すとこれまたたくさんあります。その中で、今回は、小説家で劇作家の井上ひさしが、広島を舞台にした戯曲「父と暮せば」と対になる作品として長崎を舞台にしたものを書こうと思いながらかなわなかった物語を山田洋次監督が映画化した作品「母を暮らせば」をご紹介します。

第二次世界大戦中の1945年8月9日、長崎医科大学に通う医大生の福原浩二(二宮和也)は普段通り、自宅を出て大学の講 義を受けている途中で長崎に投下された原爆によって命を落としてしまいます。3年後、助産師として働く福原伸子(吉永小百合)は一瞬にして消えてしまった 浩二が亡くなった事実を受け入れることができませんでした。浩二の恋人・町子(黒木華)や上海のおじさん(加藤健一)、近所の人たちに支えられ、浩二の死を受け入れ始めたある日、死んだはずの浩二が亡霊としてひょっこり現れます。

伸子の前に現れた浩二は生前と変わらぬ様子でいろいろな思い出話を懐かしそうに話しては伸子の支えとなります。浩二は 幼馴染で恋人だった町子のことが気にかかりますが、町子がやってくるときに浩二は姿を現すことがありません。

死者となった浩二と母・信子はその後どうなるのか、町子は……。これは観てのお楽しみです。この映画、親しき人の突然の死をどう受け入れるのか、その後の人生をどう進めるのかを定義している作品ですが、とても予定調和の感が強く、突っ込みどころが満載です。たとえば、長崎=カトリックの図式で、家庭祭壇があり、教会に行って祈るシーンもあるのですが、なぜかカトリック信徒のように見えません。ただ、長崎だからカトリックという感じしか与えないのです。また、母・信子が教会でミサ中に倒れてしまうのですが、私たち信徒がミサ中にだれかが具合が悪くなって倒れてしまったら周りの人が誰か助けるか救急車を呼びますが、近所の親しい人しか気がつかないのです。そんなことがあるでしょうか。

そして、映画全体のストーリーも井上ひさしさんならこう描くだろうと推測して作品作りをしたという山田洋次氏の言葉がありますが、井上ひさし氏がこんな作品を書くだろうかと疑問をもたらざるを得ないのです。これはあくまでも私的感想です。すでにDVDになっていますので、ご覧になって皆さんの感想をお聞かせいただければと思います。

(中村恵里香/ライター)

予告編:https://www.youtube.com/watch?v=hvrs_103jRw

監督・脚本:山田洋次/脚本:平松恵美子/音楽:坂本龍一
製作年:2015年/製作・配給:松竹
出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一、広岡由里子ほか

 

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