《対話で探求》 ミサはなかなか面白い 44:「あがない」の意味を探ってみよう


「あがない」の意味を探ってみよう

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問次郎……答五郎さん、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 

 

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答五郎……おめでとう。今年も、ミサについて探究していくことにしよう。2週間休ませてもらったけれどきょうは、「感謝の典礼」の4回目。前回は、現在の「感謝の典礼」になっていく最初のころ、使徒たちの時代には、「主の晩餐」とか「パンを裂くこと」と呼ばれていたというところまで見たね。

 

女の子_うきわ

美沙……はい、その前にこの晩餐を定めたというイエスのことばもふり返りました。その説明で使われた「あがないのいけにえ」の「あがない」ということばがまだよくわからなかったのです。

 

 

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答五郎……そうだったね。イエスが、パンについて「これは、わたしの体である」と言い、ぶどう酒の杯について「これは、罪が赦されるように、多くの人のために流されるわたしの血、契約の血である」と言っていた(マタイ26・26~27)。ほかでもいろいろな言い方があるが、まとめて、これは、「あがないのいけにえ」の意味だと説明したところだね。

 

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問次郎……「あがない」という用語は、教会に来る前は使ったことも聞いたこともなかったのですが、教会に来てずいぶんと聞くようになりました。

 

 

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答五郎……「あがない主」キリスト、という言い方は聞いたことがないかな。

 

 

女の子_うきわ

美沙……少しはあるかもしれませんが、「救い主」キリスト、という言い方のほうはよく聞くので、同じ意味なのかなとも思っていました。

 

 

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答五郎……「あがない」という語は、日常では使われなく、古語みたいだが、れっきとした日本語だし、漢字にもある。ちょっと書いてみようか。二つあるのだよ。「贖う」と「購う」。

 

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問次郎……「贖」は難しいですが、「購」は、購読とか、購入で使う字ですね。

 

 

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答五郎……そう、「あがなう」も、もともとは相当のお金を払って、あるものを得るということ、簡単にいえば「買い求める」とか「買い取る」とか「買い戻す」という意味なのだよ。二つの漢字とも「貝」偏なのは、貝が貨幣のような役割を果たしていた名残なのだね。

 

女の子_うきわ

美沙……教会で、「贖い主」という字を見たこともあります。

 

 

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答五郎……そうだね、聖書の訳や教会用語として漢字で書く場合は「贖う」とか「贖い主」と書くことになっている。けれど、常用漢字ではないから、平仮名で「あがなう」とか「あがない」と書くね。『あがないの秘跡』とか『人類のあがない主』といった文書のタイトルで見かける。

 

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問次郎……そもそも「買い求める」「買い取る」という意味の単語が、聖書というか教会では、イエス・キリストに関して使われるのですか。

 

 

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答五郎……聖書では、お金を払って奴隷を解放するという意味の単語を使って、神による救いを表現するという伝統があるのだよ。旧約聖書の『出エジプト記』で述べられている古代イスラエル民族の体験がこのことばで記憶されているのだよ。

 

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問次郎……古代エジプトで隷属状態にあったイスラエルの民がモーセに率いられてそこから脱出するというあの有名な出来事ですね。ということは、「あがない」とは解放という意味なのですか。

 

 

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答五郎……たしかにその意味がひとつに含まれるけれど、もう一つの側面、「買い取る」とか「買い戻す」という意味も、ここには含まれている。つまり、エジプトから脱出することができて解放された民は、それで終わるのではなくて、神の民とされる。「あなたたちは、わたしにとって祭司の王国、聖なる国民となる」(出エジプト記19・6)という言い方で書かれているのはそのことだ。

 

女の子_うきわ

美沙……解放されて、自由にされたというだけでなく、そこで神との関係が出来てくるわけですね。

 

 

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答五郎……そのしるしとして、契約が結ばれるのだね。そこで、いけにえの血が祭壇つまり神のほうと民のほうに半分ずつ振りかけられて締結が完了する(出エジプト記24・3~8参照)。イエスが「契約の血」ということばで自分のことを言うとき、この契約のことが暗に思い出されているわけだよ。

 

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問次郎……すると、人間の商売用語といえる言葉を使って、神によって不自由な状態から解放されて神のものとされるということ全体が言われているわけか。

 

 

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答五郎……そう、一種の譬えといえる表現なのだよ。神との関係が含まれることばだから「解放」でも「買い戻す」でもなく、日本語的には古語のような「あがない」ということばが使われるのかもしれない。たとえば、年間主日のミサで唱えられる叙唱1の中心文を読んでもらえるかな。

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問次郎……はい。「主・キリストは、過越の神秘によって偉大なわざを成しとげられ、わたしたちを罪と死のくびきから栄光にお召しになりました。わたしたちは、いま、選ばれた種族、神に仕える祭司、神聖な民族、あがなわれた国民と呼ばれ、闇から光へ移してくださったあなたの力を世界に告げ知らせます」

 

女の子_うきわ

美沙……ちょうど、出エジプトの出来事と同じようなことが、キリストによって行われて「わたしたち」が神の民とされていることを言っているのですね。「あがなわれた国民」と言われる意味は、きょうの説明でよくわかりました!

 

 

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答五郎……キリストのわざはもっと偉大なのだけれどね。そのことを伝える意味で「あがない」には、もう一つの意味合いが含まれる。マタイによる最後の晩餐でのイエスのことばにも含まれていた「罪のゆるし」という点なのだ。それについては、次回考えてみよう。

(企画・構成 石井祥裕/典礼神学者)

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