遠藤周作氏と日本キリスト教芸術センター


遠藤周作氏というと小説家のイメージが強い方ですが、あまり知られていませんが、幅広い活動をしていた人です。その一端が伊藤神父様のお書きになった樹座ですが、それとは別にキリスト教作家たちの勉強会として、日本キリスト教芸術センターといった活動もされていました。

私が知っているかぎりのところで、日本キリスト教芸術センターの成り立ちと活動を皆さまにお知らせしたいと思います。

もう40数年前になると思いますが、遠藤氏が代々木上原のマンションを仕事場にされていた頃、若手のキリスト教の作家、評論家が集まり、霊の会という勉強会を主催されていました。これは、当時三田文学の編集長をされていた遠藤氏の周辺にいた作家たちを中心に代々木上原のマンションで月に1、2回集まりがもたれていました。

その会に集まっていたのが、作家の三浦朱門氏、阪田寛夫氏や森禮子氏、劇作家の矢代静一氏、文藝評論家の上総英郎氏、高堂要氏、武田友寿氏など10人程度だったと聞いています。そこは一種のサロンのような集まりでした。そこから生まれたのが教文館から出た『キリスト教文学全集』や主婦の友から刊行された『キリスト教文学の世界』といった全集です。

そういった活動のなかから、キリスト教を信仰する作家は、キリスト教に限らず、もっと幅広く学ばなければならないと遠藤氏が考え、音楽評論家の遠山一行氏やピアニストの遠山慶子氏、加賀乙彦氏、木崎さと子氏など、カトリック、プロテスタントの垣根を越え、また作家だけでなく、さまざまな分野の方が参加し、勉強会が表参道のマンションの一室を借りて、日本キリスト教芸術センターとして発足されました。

勉強会は月に2回、月曜日の夜行われ、各分野の一流の方々を講師に招き、1時間程度の講演を聞き、その後、軽食とお酒を口にしながら、その日の講演について話し合うというものでした。講師は、仏教、キリスト教、欧米文学、心理学、物理学、映画などなど、さまざまな分野にわたっていました。その中には、私たちがよく知る人物もたくさんいます。一例を挙げると、映画監督の熊井啓氏、女優の吉永小百合氏、宇宙物理学の小柴昌俊氏、ほか、荒俣宏氏、観世栄夫氏、杉浦日向子氏、妹尾河童氏、なだいなだ氏、村松禎三氏など、講師陣の名前を挙げるだけでもそうそうたるメンバーです。

1990年12月、原宿・福禄寿でのクリスマス会

1990年12月、原宿・福禄寿でのクリスマス会

その講師陣がまた会員になるといったかたちで人数が増えていきました。

ただ、勉強するだけではありません。年に1、2回バスで遠足に行ったり、有志で海外巡礼をしたりと幅広い活動になっていきました。

残念なことに遠藤氏がお亡くなりになって数年後、日本キリスト教芸術センターは閉鎖されました。そのメンバーのなかには、今第一線で活躍しておられる方がたくさんいます。遠藤氏の遺志が花開いた結果ではないでしょうか。


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