マタイ福音書冒頭の「イエスの系図」


福音書の冒頭のマタイの1章はイエスの系図ではじまる。アブラハムからダビデを経てイエスに至るまでの系図である。マタイは、これによってイエスがダビデの家系から出ていることを示し、旧約の預言どおりのメシアであることを証ししようとしている。

しかしよく読んでみるとこの系図には5人の女性たちが現れている。ユダヤの系図にはこういうことはないらしい。

「ユダの子はタマルによるペレズとゼラ」
「サルモンの子はラハブによるボアズ」
「ボアズの子はルツによるオベデ」
「ダビデの子はウリヤの妻によるソロモン」
「ヤコブの子はマリアの夫ヨゼフ」

とこの5人の女性たちだけが特別にこの系図にでてくる。なぜ、アブラハムの妻サラやイサクの妻レベッカは出てこずにこの5人をマタイは系図に表したのであろうか?

さてこの5人の女性たちはどういう女性なのか?という興味が湧くのは当然である。そこで旧約をたずねてみよう。

タマル(創世記38章)
ラハブ(ヨシュア記2章)
ルツ(ルツ記)
ウリアの妻バトシェバ(サムエル記下11章)

と読んでみるとこれらの女性たちは尋常な女性ではない。ラハブは娼婦であり、ルツは異邦人、ウリアの妻は人妻(!)であり、タマルに至ってはなんと説明したらいいのか。
なぜマタイはこの由緒正しい系図にこのような女性たちを登場させたのか、しかもマリアと同列に置いて。

このことは読む人たちの想像力をかき立てる。

聖書のおもしろさはまさにこういうところにあると思うのである。


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