《対話で探求》 ミサはなかなか面白い 1:そもそもミサって


カトリック教会には、「ミサ」というものがあることは、比較的知られている。それがどんなものだか、どんな意味があるのかについて、教会の外にいる人間にはなかなか伝わってこないもの。ここでは、ミサをはじめて教会生活のいろいろな伝統や特色について、広く興味があるという「初田問次郎」さんに読者代表になってもらって、いろいろと尋ねてもらい、カトリックの教会のことに少し詳しいというカトリック信者「年季田パウロ答五郎」さんから説明をしてもらうかたちで対話してもらいます。対話編でのミサ探求、それでは始まりです。

(1)そもそもミサって

問次郎……「ミサ」っていう、何か秘めやかな行事といった響きがあるように思うのですが、そもそもミサというのは、カトリック教会の中で何を指すんですか?

 

 

答五郎……キリスト教には「礼拝」ということがあること、そして日曜日が礼拝日であるということは、知っていると思う。日曜日のことを、キリスト教では「主日」というが、聞いたことは?

 

 

問次郎……教会の看板なんかで見たことがあるかもしれない。

 

 

 

答五郎……日曜日を主日として大切にする、一週間の中でもっとも大切にするというのが、キリスト教なのだが、そのことは、またいつか詳しく話したいと思う。ともかく、この日に行う礼拝、つまり主日礼拝がキリスト教の生活で柱となっているわけだが、そこで行われるもっとも基本的な礼拝行為をカトリックでミサというわけさ。主日に行われるミサを主日ミサといって、これに参加するために、信者は、日曜日、教会に通ってくるんだよ。

 

問次郎……主日ミサでないミサというのもあるってわけか?

 

 

答五郎……そう。ミサは、どのときにも行われる。週日にもミサをささげることもできる。ただ、主日ミサは、なかでも、教会活動を代表する行いだということはたしかなのさ。

 

 

(2)ミサという言葉の意味

 

問次郎……「ミサ」って何語でどういう意味なんですか?

 

 

 

答五郎……ラテン語だよ。missa って書く。そもそもミサというラテン語が教会の礼拝行為として定着するようになるのは、5世紀。ラテン語圏の教会でのことさ。

 

 

問次郎……ラテン語圏の教会っていうと、そのつまり……

 

 

答五郎……古代ローマ帝国の時代にキリスト教がユダヤで誕生したことは、世界史でも習ったことがあるだろう。ローマ帝国のなかでも、ローマを中心とする西側 の世界は、ラテン語が公用語で、そこの教会もラテン語圏の教会として、ラテン語で礼拝をすることが伝統となっていく。聖書も、教会組織の運営に関する言語 も、ラテン語だったというわけ。ローマ帝国の東側は、ギリシア語を中心とする世界だったり、もっと東側にはシリア語やエチオピア語など、さまざまな国・民 族の言葉があり、その言語圏ごとに教会があり、教会生活の伝統が形作られていくのは、わかるね。ともかく、ミサとは、西方のラテン語圏での、礼拝行為の呼 び名で、これを受け継ぐのが、今に至る「ローマ・カトリック教会」なのさ。

 

問次郎……なるほど。っで、「ミサ」というラテン語の意味は?

 

 

答五郎……この礼拝行為の終わりに「イテ・ミサ・エスト」(Ite, missa est.) という掛け声が発されたという伝統があった。「これにて閉会。行きましょう!」っといった意味の慣用句だ。そこで使われているmissa とは、ミットー mitto (送る) という意味の動詞の完了分詞形で、ある集いの終了(閉会・解散) を告げるときのさまざまなラテン語句の一つとして「ミサ・エスト」という言い方もあったのだ。ミットーは、英語で言うミッション (派遣・使命) のもとであるラテン語のミッシオの元でもある。

 

問次郎……「ミサは派遣」っていう説明を耳に挟んだことがあるがそのこと?

 

 

 

答五郎……ミサという語の意味合いの広がりを調べていって、「派遣」(ミッシオ)にも確かに関係するなというところから、「ミサは派遣」とも説かれるように なった。ただ比較的最近、20世紀になってからのことだ。あくまで、それは、ミサの一つの側面を説明するための語源説的な解釈論にすぎない。あとからの解 釈であることも確かなことだ。
元来は、あくまで、普通の解散を告知する定式句の一つにすぎなかったらしい。それでも、最後に響き、「ミサ」とい う言葉の中に、人は、この礼拝がもたらす味わい、その余韻のすべてを感じ取っていたのかもしれない。「ミサ」というラテン語に、なにか秘めやかな意味合い を感じるとしたら、この呼び名の始まったときの感覚と似ているかもしれないな。

(3)ミサは何語で行われる?

 

 問次郎……結局、カトリック教会のミサって、ラテン語で行われる礼拝なのですね?

 

 

 

答五郎……それが、ちがうんだよ。現代では、ミサは、いろいろな言葉で行われている。日本の教会であれば、日本語でミサは行われているんだ。

 

 

問次郎……カトリック教会、しかもローマ・カトリック教会っていうのは、ラテン語圏の教会で、聖書も教会組織の運営もすべてラテン語を使うところということはさっきおっしゃったではないですか?

 

 

 

答五郎……そっ、そうなのだが、そこが大きく変わったのが現代、正確にいえば、1962年から1965年まで行われた第2バチカン公会議という全世界のカト リック 教会指導者の集まりをきっかけに始まったカトリック教会の改革のある意味でもっとも目立った特徴なのだよ。礼拝の言語も、それ以来、いろいろ民族・国・地 域の言語で行われるようになっている。それは、大変大きな歴史的変革で、その意味や経緯から話そうとするとまた長くなるのが、どうする。

 

問次郎……大変興味がありますね。ただ、まずは、ミサという礼拝の様子がどのようなものかをまず知りたいので、日本の教会で日本語で行われてるままに説明しただけますか。

 

答五郎……では、そうすることにしよう。といっても、その礼拝の進行、これを「ミサの式次第」というのだが、それによる説明も結構長くなるから、次からにすることにしよう。

 

 

問次郎……きょうは、ありがとうございました。

 

(企画・構成 石井祥裕/典礼神学者)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

16 − 3 =